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第20話 酔いどれの告白10

(なごみ語り) 大野君の告白をどう対応していいか分からなくて逃げてきた。向き合う資格もないけど、逃げる資格もない。自分の意気地のなさに泣きたくなった。 同性に告白するなんて、よっぽどの決意があったに違いない。それを笑って蔑ろにしたんだから、嫌われただろうな。僕という人間を軽蔑してもらっても構わない。大野君には申し訳なかったが、前にも進めない僕に、人を好きになる資格はなかった。 彼にはもっと相応しい女性がいるだろう。 ひとりで歩く夜中の道は暗くて冷たかった。 好意を受けて、浮き足立つ気持ちになるのを抑えるには充分な距離だった。足早に歩を進めると、煌々と輝くコンビニの明かりに救われた気持ちになる。 「いらっしゃいませ」 店にはこの間お世話になった中村君がおり、僕を見て会釈をした。つられて僕も頭を下げる。 カゴを持って店内を回った。逃げる口実で外へ出たので、欲しいものは無かった。しょうがないから、お菓子や飲み物をカゴに入れる。大野君が好きそうなものを適当に選んだ。もし彼が起きていたら一緒に食べようと、自分で食べないようなものも選んだ。 「こんな時間に珍しいですね」 時計は深夜の3時半を過ぎていた。夜明けはまだまだ先で、他の客も居ない。静かな夜明け前だ。 「ちょっと眠れないから、散歩に来たんだ」 「コンビニ店内の光は明るすぎるので余計に眠れなくなりますよ。気をつけてください」 中村君は、買った商品を袋に入れて、僕に手渡した。 「そうだ、眠れなくなったら、僕に連絡してください。バイトが無くても夜中は結構起きてますから、暇つぶしにお話ししましょう」 中村君が携帯番号を書いた紙をお釣りと共に掌へ乗せる。 「あ、ありがとう…………」 最近の若い子が簡単に携帯番号教えることに驚いた。中村君は得体の知らない僕に躊躇もせず、連絡先を渡してきた。世の中にはもっと悪い人がいるから気をつけないといけないと注意しようと思ったが、言葉を飲み込んだ。 お節介は僕の性に合わない。 帰宅すると、大野くんは起きていた。買ってきたお菓子を机に並べて他愛もない話をする。さっきの重い空気は一掃されたようで、彼は大型犬のように懐いてきたが、いつもの大野君だった。 そう。僕へ恋したって何も生まれない。さっきの気持ちは酔っ払いの戯れ言だから、忘れるんだ。 ソファに並んで、撮り溜めしたバラエティを見ながらいつの間にか寝ていた。 ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン チャイムの連打音で目が覚めた。 朝が来たらしく、ソファの隣では大野君も寝ている。 時計は9時過ぎを指しており、室内はすっかり明るくなっていた。

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