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第32話 大野となごみ4

(なごみ語り) 素の僕を知ったら失望して、僕に興味が無くなるのだろうか。明るくて、屈託のない笑顔を僕に向けることも無くなるのだろうか。興味本位で僕に恋をしているだろう大野君が、本当の話を聞いたら僕を嫌いになるのだろうか。 僕には大野君が眩しすぎる。 直球でぶつけてくる気持ちが痛い。 気持ちに応えられないなら、いっそのこと嫌われたほうが楽だ。 「素の僕が知りたい?」 僕は大野君をじっと見つめた。 ここで話してしまえば楽になるのかな。 「教えてあげようか。僕のこと……」 「えっ、なごみさんのこと、知りたいです。教えてください。何でも知りたい。些細なことでいいですから」 僕は長い間を持たせて、話し始めようとした。 諒とのことを伝えてみようと思った。僕が男しか好きになれないのも、めそめそ泣いて女々しい僕の中身も、ここでぶちまけてしまいたかった。 距離を詰めたい大野君に牽制の意味を込めて、衝動的に打ち明けたくなったのだ。 「和水、部長が呼んでる。すぐ来い」 突然寺田が現れて、僕の前に仁王立ちした。 お約束……だな。 「お前ら休憩は終わりだ。仕事しろ」 「……分かった」 さっきまで浮かれてコンパとか言ってたくせに、現金な奴だ。僕はしぶしぶ立ち上がり寺田に続いた。大野君が何かを言いかけたが、上手く聞き取れなかった。 結局大野君へ何も話せずに終わった。 僕の心の内を伝えようとして寺田の邪魔が入った。 これが良かったのか、悪かったのか分からない。でも内心ホッとしたのは事実だ。 嫌われたくもなくて、好かれたくもないって僕は本当にワガママで、心底反吐が出る。

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