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第34話 コンビニ店員2

(中村誠語り) 隣にいたなごみさんが長いため息をついた。 そう言えば、顔色も良くないように思える。 「お仕事、忙しそうですね。うちのコンビニでも最近お見かけしませんし……」 「期末でもないのに残業ばかりだよ。中村くんも今のうちに遊んでおかないと、学生が一番楽しいからね。自由な時間も沢山あるから、何でもできるよ」 俺は彼女もいないので、バイトと家と学校の往復で日々が過ぎてゆく。バイトも深夜のコンビニだけで、サークルにも入っていない。人気のゼミには抽選で漏れて、友達も少ない。これといった趣味も車の免許も無いし、童貞だし、つまらないただの大学生だ。 なごみさんに釣り合う人は、俺みたいな学生ではないことは分かる。そのうち素敵な恋人と深夜のコンビニに来るんだろう。恋する瞳で相手を見るのかな。 俺はそれを指を咥えて待つしかないことに愕然とした。はーあ、急に虚しくなってきた。自分の否定要素を延々と考えて凹む。 「ん……?……!!!!!!」 ふいに左肩に重い何かが乗り、それを見た俺はギョッとした。 ななななごみさんが……寝てる。 しかも俺の肩にもたれかかって寝てる。 これって誰得?俺得しか考えられないけど。 すーすーと気持ちよさそうな寝息が聞こえてきそうな位、顔が近かった。 店内が暖かいからか頰がほんのりピンク色で、長い睫毛が影を落としている。 すげー綺麗だ。 どうしよう。俺、バイト上がりだから臭くないかな。大丈夫かな。 なごみさんからは、柔軟剤のような石鹸みたいないい匂いがした。 よっぽど疲れているんだろう。 しばらくこのままでいようと思った。 結局、小一時間ほどなごみさんは寝ていた。起きた時の慌て方が可愛いくて、キュンとしてしまう。 携帯番号とメールアドレスも交換してもらい、有意義な時間だったと、寝坊した店長にも心からお礼を呟いた。 しばらく思い出してはにやにやしていた。

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