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第35話 なごみと過去1

(なごみ語り) 寺田の営業力は認めているが、飲み会の仕切りにも力が発揮されるとは驚いた。 すぐメンバーを決めて、日にちも店も決めてきた。タイミングもさることながら、ヤル気に感心する。 社内メールで詳細が送られてきたので、思わず画面を見入ってしまった。僕が合コンへ行くことを、もし元恋人が知ったら笑い転げるだろう。それくらい、ああいう場へは自ら近付くことは無かった。 今朝、久しぶりに諒の夢を見て少し泣いてしまった。正確には起きたら泣いていた。諒と別れて4ヶ月、まだ時々涙が出る。きっと再び会うことは叶わないけど、実際に本物を見たらどうなるか、考えるだけで頭痛がした。 「合コンですか。和水さんには似合わなさそうですね」 僕のパソコン画面を見たらしく、大野君の元カノである佐々木さんが呟いた。いつの間にか後ろに立っていたようだ。 彼女に言われなくても、自分が1番よく分かっている。 「私も行きたいな。出会いが欲しいんです。メンバー足りてます?」 「いいけど、大野君来るよ」 佐々木さんは緩くカールした長い髪を触りながら甘えた声を出す。こんな長さでパソコンが打てるのかと心配になるくらい長い爪には、ベビーピンクのハートが付いていた。 「大野君とのこと、部内で内緒にしてたのに、なんで知ってるんですかぁ? もー和水さんたら、誰から情報仕入れたんですかぁ。もう、もう……」 「いや、本人から聞いた」 「内緒にしていてくださいよ。社内の噂は今後色々やりにくくなるんで」 ペシペシと肩を叩かれて、沈黙する。 僕は辟易するくらい、こういうやり取りが苦手だ。やっぱり佐々木さんは無いと、ゲイの僕でも思うのだった。

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