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第36話 なごみと過去2
(なごみ語り)
ものすごく場に疲れていた。
女の子と話すということは想像より遥かに気を使っていて、仕事とは別の疲労感に襲われていた。
相槌を打ちながら笑顔のまま耳を傾ける。笑顔というか、口角が上がったままの表情筋をキープしていた。
寺田の集めた女の子たちは、僕から見ても可愛かった。だけども、事あるごとに纏わり付いてくる。場数を踏んだ手慣れている女戦士の集団みたいにだった。
さり気なく腕や太ももに触れ、ふわっと香水の香りを振りまいている。ノンケなら大喜びしそうなことも僕は嫌だった。早く帰りたいと、疲れた心が叫んでいる。付き合いでも来るべき所ではなかった。
僕はヨロヨロになりながらトイレへ避難した。
水で顔を洗って、もう少しだからと自分を元気付ける。疲れた顔が虚しく見えた。
少しして、誰かが入ってきた。
「やっぱりここにいた。大丈夫ですか?顔色悪いですよ。無理しないでください。苦手じゃないんですか」
その人物が優しく背中をさすってくれる。大野君だと気付くにはそんなに時間がかからなかった。
「あ……うん。ああいう場に慣れなくて人酔いした。大野君こそ、いい子がいたんじゃないの?こんなとこにいたらチャンスを逃しちゃうよ」
いい雰囲気になってた女の子がいたはずじゃないかな。対角線上に座っていたボブの子が頭を過ぎった。
「いい子って……なごみさん、それ意地悪で言ってますか」
「違うよ。仲よさそうに話していたから、僕の介抱しているより女の子といたほうがいいかと思っただけ」
絶対に女の子の方が大野君に合う。
「俺がやりたくてやってるんで、気にしないでください。それよりこの後、飲み直しません?俺も飽きちゃいました。あの子達の戦闘モードにうんざりです」
彼も同じことを思っていたことに胸をなで下ろす。確かに口直しをしたかった。
「……いいよ。気分転換したかったんだ」
そう言うと、大野君の顔がぱあっと笑顔になった。
「やったー。約束ですよ。行きましょうね。二次会に行きたがる寺田さんを絶対に断ってくださいよ」
「あ、ああ……分かった」
喜ぶ大野君はやっぱり犬みたい。
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