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第37話 なごみと過去3
(なごみ語り)
ところが、会がお開きになって、寺田が気の合った女の子達とカラオケに行くと言い出した。案の定と言うか、思った通りの流れになる。
僕は心身ともに限界だったので遠慮した。
大野君は寺田の強引さに勝てる筈もなく、カラオケに連れて行かれる。残念そうな大野君は引きずられるように寺田と共に連行されていった。
僕だって飲み直したかったのに、仕方ない。
僕は彼の残念そうな表情を思い浮かべながら駅へ向かって歩き出した。今度飲みに誘ってあげようかな。
大野君、あんなに喜んでいたのに……可哀想に思えてきた。
人混みに紛れ、改札口を通ってホームで電車を待つ。
仕事帰りの人、遊び帰りの人、色んな人が駅にはいる。ぼんやりと立っていると、反対側のホームにある姿を視界が捉えた。
その人は……背が高いから目立っていて、大きなスチールケースを持っていた。黒っぽい服を着ているところもあの頃のままだ。
ここからではよく顔が見えない。
だけど、僕が会いたくて、会いたくて、会いたくて仕方がなかった人に似ていた。
「諒っ……」
僕は無意識に走り出していた。
諒に似ていた。すごく似ていた気がする。
会えるかな。会ったら何を話そう。
会いたい、会いたい。
急いで階段を降り、反対側のホームへ一気に駆け上がった。途中、踏み外しそうになってよろけるも、そのままに体勢を整える。はずむ息と心臓の音が煩く全身に響いていた。
諒は?どこ?
ちょうどホームに電車が滑り込んできて、沢山の人が乗り降りをし始めた。週末の仕事終わり。機械的に行進する人達に紛れて前が見えなくなる。
スチールケースを持ってる人はいない……やっぱり……気のせいだった……?
電車のドアが閉まって発車すると、ホームは閑散としてしまった。
諒じゃなかった……のかな。
僕は諒と出会った頃のことをぼんやりと思い出していた。
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