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第46話 なごみと過去12

(なごみ語り) 諒とは2週間に1回ほど写真を撮るために会った。最初は緊張していたけど、3回目ぐらいからはリラックスすることができた。 行き先も公園から水族館、ショッピングモールや動物園などで、今思うとデートコースそのものだった。 まさか諒の気持ちが僕に傾いているとは1ミリも思っておらず、僕の中で2人は全く違う世界に住んでいて、たまたま写真で関わっているという感じだった。 そうしないと諒への想いが溢れて自分が苦しくなってしまう。意識しなくても、彼への想いは溢れんばかりに育っていた。 春になって諒は大学を卒業し、僕も就職活動が佳境に入ってきた。そのため、写真を撮るための時間が少なくなる。僕の都合で諒の大切な時間を振り回すことに忍びなかったから、終わりを申し出ることにした。諒にそれを伝えると、残念そうに笑った。 「しょうがないね。次で最後にしよう。なごみ君の行きたいところへ行こうか」 行きたいところか……次で諒と2人で出掛けるのが最後になるのかと、寂しい気持ちになった。 「あの…………」 「決まった?映画館、それとも美術館とか?」 「…………諒さんの部屋に飾ってある明け方の空が見たいです」 ダメ元で僕が言うと、諒が驚いた顔をした。 「えっ、あの空?」 「あのっ、難しそうならいいですから。好奇心で見てみたかっただけなので。すみません……」 「……うん。ちょっと待って……」 諒が考え込んだので、僕は激しく後悔していた。面倒くさいことを言ってしまったのかもしれない。 「あの写真は、俺の実家近くで撮ったんだ。うちはすごく田舎で何もないけど、なごみ君がよければ連れてくよ。顔を見せに帰って来いって親もうるさいし、ちょうどいいや」 「いいんですか……?」 「あぁ。行こう。なごみ君にもあの景色を見てもらいたい」 なんと最後のデートは、諒の実家へ行くことになった。デートというよりは旅行で、全くの予想外だった。まさかの逆転ホームランだ。 最後だから、神様がご褒美をくれたのかもしれない。 今でもあの頃を思い出すたび、甘酸っぱい想いが胸に広がり、泣きたくなるのだった。

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