47 / 270

第47話 なごみと過去13

(なごみ語り) 諒の実家は、夜行バスに揺られて早朝着いた駅から、さらに電車とバスを半日乗り継いだ所にあった。 諒の言ったとおり、ものすごい田舎にある。 5月初旬で桜が満開だった。 終わったとばかり思っていた薄ピンクの花びらに目を奪われる。7月には蛍も見れるらしい。 諒のご両親は息子の帰りを楽しみに待っていて、暖かく迎え入れられていた。僕も友達と紹介されて挨拶をする。正直、家族というものに縁遠い僕は、遠巻きに見ているだけで胸がいっばいになった。 ご飯とお風呂までいただく。まだ日の沈まない夕方だったけど、慣れない長距離移動で体がくたくただった。お母さんが客間に布団を敷いてくれたので、お言葉に甘えて横になることにした。 初めて来た家なのに、初めての感じがしない。諒はここで、のびのび育ったんだろうな。そんな事を考えているうちに、いつの間にか眠りに落ちていた。 「なごみ君、なごみ君、起きて」 諒の声で目が覚めた。一瞬、何のために此処にいるのか分からなくなる。あ……ここは諒の実家だ。 「あと2時間半で夜明けだから、そろそろ出発するよ。分かる?寝ぼけてない?」 諒は軽い登山スタイルだった。今から夜明けの空を見に行くんだと意識がはっきり戻ってくる。 「す、すみません。起こしてもらって」 「じゃあ、あと15分したら家を出るから着替えててね。ちょっと冷えるよ。着込んでいたほうがいい」 僕は飛び起きて急いで着替えた。

ともだちにシェアしよう!