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第50話 なごみと過去16
(なごみ語り)
僕が1人で告白をして、自己完結するのを諒は黙って聞いていた。心なしか穏やかな表情に見えたので、馬鹿にされなかったことに安堵した。
そして、再び辺りに静寂が訪れる。
遠くの方で、鳥の鳴き声が聞こえた。
夜明けの空が早朝の空に変化して、朝を迎える。朝日があたたかく周りを包み込み、全てが金色に染まった。色って不思議だ。暖色なだけで心も温かく感じてしまう。
「なごみ君、言いたいことはそれで全部?じゃあ、次は俺の番」
「え……諒さんの……?」
今度は座っている僕の前でしゃがみ込み、目と目を合わせてゆっくり話し出した。
「先に言われて男として情けなくて、恥ずかしいけど……なごみ君も男だし、こういうのは勝ち負けはないと思いたい」
諒は照れたように頬を掻いて、大きく息を吸った。
「俺だってなごみ君のことがずっと気になっていた。だから写真を撮ることを口実に会ってもらっていたんだよ。俺の気持ち、全然気付いてなかったよね。それなりに示したつもりなんだけど……好きと言われて気持ち悪いとか全然思わない。むしろ嬉しかった。自分と同じ気持ちでいてくれたことに、ありがとう」
ぎゅっと諒が僕を抱きしめた。
「俺もなごみ君が好きだ」
夢にまで見た諒の腕の中はあったかくて、居心地が最高だった。だけど、ちょっと待って。何この展開。
「えっ?えっ?ええええーーーー」
「なごみ君、驚きすぎ。先に告白したのは君だよね」
「でも、僕は男で、諒さんも男だよ。それでもいいの?僕はゲイなんだよ。気持ち悪くないの?」
諒が不快そうに眉間へ皺を寄せた。
「それが何か問題なのか。お互いが好きなら関係ないだろ。違う?」
確かに……何にも問題はないけど。
「本当に僕でいいの?僕は諒さんを好きでいていいの?本当に?ほんとうなの?」
「いいよ。いいから、とりあえず黙って」
そう言われて、いきなり唇を塞がれた。
僕にとって初めてのキスは、やり方が全く分からなかったので、されるがままだった。心臓が今まで生きてきて1番跳ね上がったと思う。ドキドキがうるさい。
もしかしたら死んじゃうかもしれない。
「なごみ君、これから恋人としてよろしく」
「…………う、ん……」
長い長いキスだったと思う。
僕はうれしくて、頷きながら涙をこぼした。
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