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第51話 なごみと過去17

(なごみ語り) そして、諒とは3年間付き合った。 僕は諒が大好きで僕のすべてで、彼がいれば何も必要なかった。恋人がいた3年間は情緒が安定し、自分にも自信が持てたと思う。 戻ってこない時間ほど幸せに感じてしまうのは人の性だろうか、いつまで経ってもあの頃の自分から解放されない。 そして今年の夏の終わりに突然別れを告げられる。 お互いのためになるから別れよう、なんてよく分からない理由は今でも理解ができない。ただ、理由なんかより諒が僕と離れたがっている事実に打ちのめされ、受け入れる決意をした。 先日、たまたま寄った本屋さんで見た写真雑誌に諒の名前を発見した。遠い外国で撮った真っ青な空とクジラの群れの写真が掲載されていた。有名な賞を取ったらしく、祝福の言葉が共に並んでいる。 活動拠点を海外に移したんだと、元気そうな姿を思い浮かべて切なくなる。 今でも遠くで空の写真を撮っているのだろうか。 遠い空の下、僕の事を思い出したりすることはあるのかな。そして、ほんの少しでいいからあの頃の気持ちを思い出してほしい。 僕と恋人だったことを忘れないでほしい。 諒を好きだった幸せな時間を覚えていてほしい。 僕を…………忘れないで…………ほしい 気付いたら、ホームには再び電車が入ってきた。沢山の人が乗り降りするのをぼんやり眺めてから反対側の乗り場へ戻る。もう、迷いはなかった。 日常がまた僕を追い立てる。 早く家へ帰ろう。 僕は背筋を伸ばし、電車へ乗り込んだ。

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