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第53話 恋人と友達の境目1

(なごみ語り) 渉君がうちに来てくれるようになって3ヶ月が過ぎた。仕事はプロジェクトもあり相変わらず忙しい。 だけど週末に渉君が来てくれることで、なんとか健康を保つことができた。 渉君のお陰で生きていられる。 彼は魔法の手の持ち主だ。 そして日頃のお礼に渉君を食事に誘うことにした。渉君の食べたいものを一緒に共有したかったのだ。いつものように家で治療をした後に2人で出掛けることにした。 「あの方はなごみさんの兄弟ですか?」 行きに寄ったコンビニで中村君に聞かれた。 「違う、友達。似てるってよく言われるけど、渉君は僕より年上だよ」 「ええっ、マジっすか……」 僕が笑いながら答えると、中村君は恥ずかしくなったのか顔を赤くした。渉君と僕はパッと見似てるとよく言われる。あまり夜遊びはしたことがないけど、一緒に出掛けると絶対誰かに指摘されていた。 しかも今日は似たような格好をしているから余計にそう見えたらしい。2人とも濃紺のブルゾンを羽織っていた。 「これからどっか行くんですか。うらやましいな。俺は朝までバイトです」 「ちょっとご飯に行くんだ。中村君もお疲れさま。がんばって」 デートか…… 渉君との関係はあれから何にも進んでいない。お互い口にも出さないので、無いことみたいになっている。 僕が密かに諒の写真が載ってる雑誌を買っていることも、きっと知っている。 諒を全く忘れていないのも知っている。 渉君は僕と諒の共通の友達だから、もしかしたら諒から何か事情を知っているのかもしれないが、それも何も言わない。 渉君はどう思っているのだろうか。 話題に出すと必然的に向き合わないといけなくなり、気持ちに応えられない自分もいて、踏み出せないのだ。一体僕はどこに向かって行けばいいのか、さっぱり分からなかった。 人をまた好きになれるのだろうか…… それも分からない。

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