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第63話 友人と恋人の境目11
(渉語り)
「 並んでると見た目が似てるから双子みたいだな。泣いていた時は玉砕したかと思ったのに残念だ。で、なんて言って、この美人さんを落としたの?」
まさかの洋ちゃんが僕の気持ちを受け入れてくれた。
信じられなくて、だけど嬉しくて、号泣していた所に榊さんとヒデさんが心配して店内に入ってきたのだった。
「それは秘密。僕の宝物だから、榊さんには絶対に教えない」
「渉君、鼻水出てるよ。これで拭いて。もう泣かないで。ほら……」
洋ちゃんが隣からティッシュを出して、鼻を拭いてくれる。涙や鼻水で顔がぐしゃぐしゃだった。
彼の手が心地よく、まだ夢の中にいるみたいに足元がおぼつかない。
「なんか、いちいち甲斐甲斐しくて見てるこっちが恥ずかしいわ。お前ら早く帰れ。他所でやれよ」
榊さんが頬杖をついて口を尖らせた。
「では、お付き合い記念にチューしてもらおっかな。渉君と洋一君おめでとう。ほらほら、早くチューだよ。洋一君、どうぞ」
「え、は、ヒデさん、何言ってんの……?」
ヒデさんが無茶振りをしてきて焦ってしまう。
え、キス……無理だよ。
恥ずかしいし、洋ちゃんのキス顔を他人に見せるなんて絶対にしたくない。
そしたら、洋ちゃんが突然僕の手を繋いで、耳元で小さく囁いた。
「渉君、目閉じて」
「えっ……みんな見てる」
「榊さんとヒデさんだよ。気にしない」
もじもじしていたら、待てないかのように、洋ちゃんに頬に手を添えられて、キスをされた。
洋ちゃんと2度目のキスだ。
洋ちゃん、これからよろしくね。
沢山愛して、沢山面倒見てあげるからね。
だから僕を傍に置いてね。
大好きだよ。
また涙が溢れてきて、みんなに笑われた。
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