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第67話 真夜中の片思い4
(なごみ語り)
大野君のデスクは案の定、嵐が来たかのごとく荒れており、すべてがひっくり返されている。
片付ける余裕が無かっただろうが、これじゃあ消しゴム1個だって見つからないと思う。
「先ずは片付けながら探そうか。 契約書は何のファイルに入ってる?目印を教えて」
「………ええと……あのう……」
「何?早く言ってよ。時間がない」
そうすると、大野君が恥ずかしそうにアニメキャラクターの名前を告げた。僕も少し知っている、男子に人気の萌え女子高生キャラだ。髪が水色で、高いアニメ声で話し、その筋では有名な女の子である。
「………大野君、そんなのが好きなんだ。ふーん……」
「も、も、貰ったんです。貰ったから勿体無いし、だから……しょうがなく使ってただけです。好きじゃないです。なごみさん、信じてくださいよ」
「別に大野君が好きでも軽蔑しないけどさ。 可愛いし、胸も大きいし、スカート短いしね」
僕らしくもなく、意地悪っぽく言ってる自分がいた。
「だから、好きじゃないんですってば。俺が好きなのは、なご……ふがっ」
僕は思わず大野君の鼻をつまんだ。
この先を言われると、また妙な空気に包まれておかしな雰囲気になる。
2人っきりで会社にいるので、絶対によろしくない。
「言い訳と話の続きは見つかってからゆっくり聞く。とにかく片付けよう」
「ふぁい。ずみまぜん」
書類を揃えて机に仕舞いながら、アニメキャラを探した。確かに目を引く派手なクリアファイルは無いようだ。汚い字で走り書きしたようなメモとか、捨てればいいのに机に入れておく必要があるのだろうか。
「大野君、これ捨てていい?」
以前、僕が内容不一致で差し戻した際に書類へ付けた付箋だった。走り書きで間違いが書いてある。
ご丁寧に取ってある意味がわからない。処理も終わったので不要なはずだから、こういうのこそ捨てようよ。
「駄目です。なごみさんから貰ったものだから、捨てれません。 入れておいてください」
大野君がそう言うので、色々聞きたかったが面倒くさくなり黙って机へ戻した。そんなやりとりが続く中、しばらくして辺りは綺麗に片付いた。
周辺のデスクや、書類棚、無いとは思うけどゴミ箱、大野君のカバン、思いつく所を手当たり次第探したが、水色の彼女を見つけることは出来なかった。
おーい、どこにいるのかな。
大野君が必死で探しているよ。
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