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第71話 真夜中の片思い8

(大野語り) 告白したら、また振られるだろう。 ヘタレだからマイナス想像は幾らでも膨らむ。 同じことを何度も繰り返せるほど心は強くないのも分かっている。互いの白い息が夜空に消えていくのをただ眺めているだけだった。 こんな都会じゃ真夜中でも星すら見えない。 「じゃ、僕は帰るよ。明日も仕事だし。違うか……もう今日だね。数時間で出勤だ」 なごみさんが踵を返して、帰ろうとした。 もうちょっとだけ、一緒にいてください……と慌てて引き止める。 「……お腹空いてません?あそこに牛丼屋があるので、腹ごしらえしてから帰りましょうよ。お礼に奢らせてください。ご飯食べるくらい時間ありますよね?」 「………別に構わないけど……」 お腹は空きすぎて気持ち悪いを通り越していた。 24時間営業の牛丼屋は、そこだけ昼みたいで暖かな光に包まれている。色気がないけど口実に使えるのはそこしかなかった。なごみさんに牛丼屋は似合わないが、強引に背中を押して、店へ入った。 店内にはちらほら客がいる。 「僕、初めてなんだよ。ここに入るの」 なんでも美味しそうだね、とメニュー表を眺めていた。なごみさんの初めてに立ち会えたことに、所詮牛丼屋だけど喜びを感じる。 牛丼大盛りと味噌汁を頼むと、なごみさんも同じものを注文していた。食が細そうなのに大丈夫だろうか。 隣の愛しい人は、さっきから携帯をチラチラ見て気にしている。 「携帯、どうしました?大事な連絡ですか」 「あっ、いや……何でもない」 なごみさんが、サッと携帯をスーツの内ポケットへ仕舞う。 「もしかして、彼女とかですか?」 何故この質問をしてしまったのか。 俺はたぶん調子に乗ってたんだろうな。 なごみさんが俺の気持ちを受け入れてくれる日がやってきて、それは近い将来かもという得体の知れない自信が、その時まで確かにあった。 いつも俺を助けてくれるから、まんざらでもないと思っていた。少なくとも嫌われていないだろうと。 「……うん。彼女……かな。ふふふ、まあね」 なごみさんが照れながら言った。 か、かかかか彼女? 根拠の無い自信はガラガラと音を立てて崩れていく。 ショックで箸が落ちそうになり、味噌汁をお茶と間違えて一気に飲もうとしてむせた。 それでも照れた顔も可愛いとか思えるから、恋って凄いと思う。

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