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第73話 大野のズル休み2

(大野語り) で、ずる休みをすることにした。 始業時間の45分前に電話を入れる。 この時間は課長しか居ないのでわざと狙った。 小うるさい寺田さんもまだ出社していない。 契約書が無事見つかって手元にあること、お騒がせしたことを謝罪し、体調が優れないから有給を取得したいと申し出ると課長は承諾してくれた。 電話を切ってゴロンとベッドで横になる。 天井の木目を目で追いながら、昨夜の出来事を思い出していた。 なごみさんは新しい彼女がいると言った。 3ヶ月前に焼き鳥屋へ行った時、思い出しては泣いているようだったのに、もう吹っ切れたらしい。 案外立ち直りが早い人なのかな。 もっと引きずる性格かと思っていたが、新しい彼女はそれをも超越するような人なんだろうか。 なごみさんを触りたい放題で光り輝くような笑顔も見れるだろう。 羨ましいなぁ…… もう妄想ばっかりで飽きた。 ホンモノを愛でたい。 何を言われても嫌いになれないこの俺をどうにかしなくては。 「おーい、隼人、待鳥先生の所に行くならこれを渡してきてほしい。新作を食べてもらう約束だったんだよ。あと、次は何が食べたいか聞いといてくれよな。次に俺が行く時持ってく」 襖が開き、兄貴が和菓子の包みを渡してきた。 ずっしりと詰まっている。一体中身は何なのか、気合いが入りまくっている。兄貴お気に入りの先生は待鳥(まちどり)という名前らしい。 「まだ行くか決めてないし。これから少し寝る」 もう、眠気全開で瞼が重い。 顔を覗かせた兄貴は俺の顔をまじまじと見た。 「何?」 「顔に生気がない。幽霊みてーだ。寝たら、待鳥先生のところに絶対に行けよ。どうせやることないだろ。身体のメンテナンスしてこい。ほれ、これ地図な」 ペッと紙を投げられて襖は閉まった。 酷い扱い方に、我が兄ながら人格を疑った。 取りに行くのも億劫で床に落ちた地図を一瞥した後、布団へ潜り込んだ。 遠くの方で携帯がメッセージの受信を告げた気がしたが、睡魔には勝てなかった。

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