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第80話 渉の訪問3
(なごみ語り)
食後、渉君にマッサージをしてもらった。ベッドで横になって腰を揉んでもらう。渉君は何でも上手だ。魔法の手によって疲れが解されて、幸せに包まれる。
「あのね、さっきの和菓子は大野から貰ったんだ。」
渉くんが持ってきた和菓子は、色とりどりの練り切りに甘すぎない餡が上品で美味だった。
熱い緑茶で頂いたらもっと味が引き立つと思うが、生憎うちにはコーヒーしか無かった。
「えっ、大野君と会ったの?」
驚いて起き上がろうとしたら、こらっと怒られる。そのままうつ伏せで会話を継続した。大野君の実家は和菓子屋さんで、彼のお兄さんが渉君の患者らしい。お兄さんの紹介で来院したらしいけど、事情を知っていた渉君はずる休みだと怒っていた。
「信じられないよね。洋ちゃんにあんなことまでさせておいて。酷い奴だ」
「うーん。でもね、会社の後輩だし放っておけないんだ。つい助けちゃう。大野君だって疲れてたからね、悪くないよ」
人から構われたくなる何かを彼は持っている。
犬みたいな、何だろうか……そういう無邪気さがあり、それが大野君の魅力だと僕は思う。
彼は万人から愛されるタイプではないかな。
事実、休まれても負の感情を抱くどころか、心配をしてしまった。
「だから、洋ちゃんに酷いことした大野が許せなくて、そしたら無性に会いたくなって来ちゃった。もう眠いよね。寝てていいよ。僕はお風呂に入ってくる」
うとうとしていると、渉君の手が離れた。
僕は寂しくなって、立ち上がった彼の手を引く。
「渉くん……すぐ寝るから、少しだけ側にいて」
渉君が小さくため息をついてベッド脇に腰掛け、僕の手を優しく握り返してくれた。
「洋ちゃん……あのね、僕たち恋人になったでしょ。それなりに僕だって我慢してるの。今日は疲れてるから早く寝なきゃ。ほら」
ちゅ……と、おでこにキスをくれたので、僕は素直に頷いた。
「うん……おやすみ」
「おやすみ」
そんなの、僕も同じだよ。
僕の中で渉君への気持ちが徐々に大きくなっていっている。彼を想うとほんわか優しい気持ちになる。
赤い顔を隠しながら渉君の温もりを感じていると、深い眠りに落ちていた。
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