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第108話 交差する想い2
(なごみ語り)
一通り笑った後、話題は再び東さんへ戻った。
「東さんと大野君は今日は何の帰りですか?そもそもどんな繋がりなのかな?だって全く部署が違うんでしょう」
渉君が僕の腕に手を絡ませている。彼はさっきからぴたりとくっ付いて僕から離れない。
ちなみにカウンターの1番奥から渉君、僕、1つ空いて東さん、大野君と並んで座っている。
渉君は接客業だからか、初対面の人でも全く臆することはなかった。
「ただの飲み友達だよ。たまたま会社のエレベーターで会って、意気投合して飲みに行ったんだ。最近、結構手痛い振られ方をしたみたいで、俺は愚痴聞き役かな。ね?大野君」
「えっ、は、はい……」
東さんの目が僕を捉えて『知ってるよ』と言わんばかりにアイコンタクトをしてきた。
大野君とのことを知ってるんだ。
当の本人は東さんに隠れていて、どんな表情をしているのか全く見えない。
「えー、大野君振られたんだ。誰に?会社の子?その話聞かせてよ」
渉君がわざわざ東さんに隠れてる大野君を覗き込む。もしかして知っていてワザと聞いてるのではないか。そんな考えが彼の口調から伺えた。
「………もう少しして風化したら言いますから、まだ放っておいてください。お願いします」
大野君が下を向き、消え入りそうな声を発する。彼をこんなにも傷付けてしまったと、胸が締め付けられるような気持ちになった。
全て僕のせいだ。
ぎゅっとズボンの膝部分を握る。
「もう、やめてくださ………」
「もうさ、この際ハッキリ言えばいい。いつまでもウジウジしてると前に進めないよ。彼の恋人に知られたっていいじゃないか。
梅が満開の公園で、キッパリと大野君はなごみ君に振られた。ほら、いい加減現実を見ろって。なごみ君は恋人がいるんだよ。君は振られたの」
僕が口を開きかけた時、東さんが一気にまくし立てたため、場がしいんと静まり返った。
抉った傷に塩を塗るような酷い口調に耳を塞ぎたくなる。
「…………お、お前、これはダメだ。第一、征士郎が言うことでもない。酔ってるのか?大野君も気にしないで。こいつは昔っから口が悪くて空気が読めないところがあるからな。おい、この冷えきった空気に謝れ。どうすんだよ、もうもう」
「すみません、俺………もう…………」
ヒデさんが慌ててフォローに入るも、時は既に遅く、大野君は勢いよく店を出て行ってしまった。
「あ、待って大野君……」
僕が追いかけようとすると、ぐいと強く腕を引っ張られる。渉君の目が真剣に怒っていた。
「……洋ちゃんが追う必要はないでしょ。そんなの自業自得だし東さんに任せればいい。それより聞きたいことがあるから、座って」
どうしようも逃げられずに、歯がゆい思いで僕は腰を下ろした。
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