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第113話 3年後1

(なごみ語り) 朝起きて1番にすることはトイレに行くことや水を飲むことではなく、メールをチェックすることだ。 今朝も例外ではなく、ぼんやりとした頭で携帯を開いた。指示等は何も無かったので、安心してベッドから出たら、ピロリンと遅れてメールが着信をした。 開くと朝一でやってほしい業務の羅列があり、僕は長いため息をついてから『了解しました』とすぐ返信をした。 あれから……僕が再び1人になり、3年が過ぎた。 本当に色々と言うか、修行の様な日々だった。死ぬ思いでプロジェクトを終え、ホッとしていたのも束の間、突然秘書室への異動を命ぜられたのだ。 まさに青天の霹靂と言ったところだろうか。 今までやってきたことが全く役に立たない部署への異動に、ものすごく戸惑った。 すべて一から勉強した。秘書とは1人で黙々と仕事をする訳ではなく、上司の性格と習性を見抜いてそれに合わせて支える仕事だ。 上司の言うことに、何事にも動じてはいけない。 後で知った事だが、東さんが僕を推薦したらしい。現在、東さんはやり手の秘書室長だ。課長や部長をすっ飛ばしていきなり室長になる人を初めて見た。 社内のどんなに偉い人でも室長には頭が上がらない。そして、相変わらず秘書室女子の憧れの的でもある。 顔を洗っていると、携帯が鳴った。 この着信音は……分かっている。社長だ。 早朝にかけてくるのは、この人しかいない。 「……おはようございます。和水です。どうしました?」 彼は2コールで出ないと機嫌が悪くなる。朝は大体電話があるため、トイレに行くときでさえ携帯を持って移動していた。 「おはよう。あのさ、二日酔いが酷くて、いつものやつ買ってきて欲しいんだけど」 「承知しました。他に必要なものはないですか?」 「ないけど……なるべく早く欲しい」 「分かりました」 今日は早めに起きてよかった。 いつもより2本早い電車に乗れそうだ。頼まれたものを買って、社長が来る前には会社へ着く。 僕は急いで身支度を始めた。

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