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第125話 2人のルール2

(大野語り) 「え、あれっ、もしかして、中村君……だよね?コンビニの。懐かしい。うちに入ったんだ。うーんと3年ぶりかな。すごい、偶然ってあるもんだね」 「お久しぶりです。覚えてくれてたんですか。なごみさんに会えて感激です。すごく会いたかったんですよ」 「そんな、会いたかったなんて嬉しいな」 そりゃあさ、分かってたけど俺は無視かい。 秘書室に入った途端、なごみさんが歓喜の声を上げて中村君に駆け寄ってきた。 2人で昔話に花が咲いている。 俺だって、会いたくて来たのに何も言えない。再会を喜ぶ2人をボーッと眺めることしかできなかった。側で立ち尽くす俺に、誰かが肩を小突く。 「大野君、久しぶりだね。噂は聞いてるよ。向こうで営業成績トップだったのに、3年経ったからって無理矢理戻ってきたって。もしかして和水が原因?最近あいつの様子がいつもと違うのって大野君絡みでしょ」 ニヤリと東さんが笑った。 相変わらず何を考えてるか読めない。 「うちの大切な社長秘書なんだからさ、メンタルで不安定にさせるなよ。仕事に支障が出てミスされたら取り返しが付かない。やっと振り向いて貰えたんだろ、大切にしろよ。大野君も大人になったかと思ったけど、その表情を見てるとまだ中身は子供だね。嫉妬丸出しの犬みたいだ」 「……ご忠告は有難く頂きますが、犬ってあんまりじゃありません?」 「君は犬っぽいよ。和水もそこに惹かれたんじゃない?」 くそ……この人相手だといつも向こうのペースだ。俺は唇を噛んだ。 無事に決裁を貰えたので、支店長に電話で報告をした。ついでに直帰も再度了解を得た。 後は帰るのみだが、なごみさんには中村がまだ纏わり付いていた。言葉も交わせず、項垂れて1人で帰ろうかと寂しくエレベーターホールへ向かう。 「………っ、大野君。待って」 背後になごみさんの声が聞こえた。 「ごめん。折角来てくれたのに。この後、ご飯を食べに行かない?僕も終わりそうだし、少し待ってもらえれば帰る用意をしてくるから」 俺を追いかけて来てくれたことに、嬉しくて涙が滲んできた。 「………なごみさん……」 「どうしたの?そんな顔して。なんか室長に嫌なこと言われた?気にしなくていいよ。あの人は元々意地が悪いから」 心配して俺を見上げるなごみさんに、ドキドキと胸が高鳴った。 色素の薄い瞳に、長い睫毛と柔らかそうな唇を見ていると、今すぐにでもキスしたい衝動に駆られる。 この人が俺を好きだと言ってくれたんだよな…と改めて信じられない気持ちになった。

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