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第127話 2人のルール4

(なごみ語り) 段々と身体が熱くなり、握っている手に力が籠る。大野君がじりじりと迫り、いつの間にか僕は壁を背に舌を交わしていた。 最初からこんな激しいのが来るとは思わず、困惑している自分がいた。 絡め取られるかと思う位、口内を吸われて、彼のペースについていくのが精一杯だった。 「ちょっ、と、待って………ここ外だよ。誰が来るか分からない……お、おのくん」 同僚がいない隙に隠れてキスをするとか、スリルを感じるけど、見つかったら洒落にならない。大野君は分かってるのかな。 僕が口を離して必死に訴えると、彼はしゅんと寂しそうな顔をした。 「あ……嫌だったですか。すみません。つい……」 「嫌じゃないよ。嫌じゃないけど、寺田達に見つかったらよくない。一応、外では激しいのはやめておこうか」 口は離したものの、顔はものすごく近いままだ。しかも僕の後ろは壁なので逃げ場は無かった。 「なごみさんの唇って、柔らかいですよね。細くてクセがある髪の毛も、好きだな」 今度は不意に抱きしめられて、髪にキスが降りてきた。とくん、とくん、とワイシャツを通じて早い鼓動が聞こえてくる。 「ずっと長い間、気持ちを抑えていたから、止まらなくなってしまう。あなたに触れたくてしょうがないです。たぶん俺の頭の中は、この辺の誰よりもやらしいことを考えてます」 「……………」 やらしい……こと? 大野君ってそんなことを口に出したりするのか。彼の雄の部分を垣間見た気がした。 本当に僕を恋愛対象として見てくれていることに底知れぬ喜びを感じる。 「いくらなんでも、見境なく襲ったりしませんから。そんなことしたら嫌われるってことぐらい知ってます。もうなごみさんが俺から離れていくなんて絶対に嫌です。少しだけ……こうさせてください」 腕の中で僕が身を固くしたことに気付いた大野君は、まるで自分に言い聞かせるように言う。 色々と考えてやっているのだろうけど、どれも所々抜けていて可愛い。 こういう所が彼らしく、僕が好きなところだ。 「来週なら……いいよ」 「えっ?」 「来週の土曜日なら家に泊まりに来てもいいから。それなら気が済むまで触っていいよ」 僕も面と向かっては恥ずかしくて言えなかった。大野君の腕の中だからこそ、顔が見えないから辛うじて口にすることができたと思う。 たぶん2人とも顔が真っ赤だ。

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