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第128話 2人のルール5
(なごみ語り)
何故、今週と言わず来週と言ってしまったのだろうか。
今週末は別段用事もなく、もし良かったら土日休みではない大野君を食事に誘おうかと思っていた。その後の雰囲気次第で、家に呼んでもよかったのに、わざわざ来週末と指定してしまった。
心構える期間が必要だった。
僕を求めてくれる大野君を受け止める覚悟がいると思った。好きだから真剣に向き合いたいと思った。
だけども〝気が済むまで触っていい〟は明らかに言い過ぎた。思い出すだけで赤面する位恥ずかしい言葉をよく言えたものだ。
セックスが大好きな尻軽な男に見えただろう。処女でもあるまいし、勿体振ることなど何もないのに、大野君に全てを見せることを心の奥底で躊躇していた。
おそらく、ノンケで女性しか抱いていない大野君に、ゲイで男性にしか抱かれていない僕を見られて、比べられることを恐れている。
幻滅されて萎えたりしたら、たぶん立ち直れない。
考えれば考える程ドツボにはまっていった。
成るようにしか成らないと自分に言い聞かせながら堂々巡っていると、あっと言う間に約束の土曜日が来た。
僕は渉君の様に料理ができないし、手料理を振舞うなんて技も使えない。食事に関して自堕落な生活を送っていることは、大野君も知っていた。
適当に駅周辺で食事をするつもりで大野君と最寄りの駅前で待ち合わせをした。
改札を通った彼を見つけて小さく手を振ると、すぐ気付いてくれた。
「早かったね。残業はやらなくてよかったの?」
彼が支店を出る報らせのメッセージが、定時とほぼ同じだったので驚いていたのだ。
「無理矢理帰ってきました。できるだけ長い時間、なごみさんと過ごしたかったので」
きっと明日は今日の分もやらなくてはいけない。だけど、僕と過ごしたいと言ってくれたことにむず痒いような、温かい気持ちになった。
「では、スーパーに行きましょう。案内してください」
「え、スーパーに何しに行くの?お酒なら家にあるよ」
「何を惚けているんですか。食材を買いに行くんですよ。こんな時ぐらいしか栄養のある物を食べさせてあげれませんから。なごみさんは偏食過ぎます」
「でも……大野君は料理できる?」
「失礼な。3年間1人暮らししていたから、人並みにできます。なごみさんが出来なさすぎなんですよ」
ここにも食生活を心配して世話してくれる人が現れた。僕は10年近く1人暮らしをしているが、基本自炊はやらない。
そんなに僕って貧弱で頼りないのだろうか。
大野君と一緒に駅前のスーパーへ行き、材料を買った後、自宅へと向かった。
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