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第142話【番外編】10年越しの約束7

(東語り) 居間の隣にある白勢部屋へ引きずるように連れ込まれた。 布団の上で、あっという間に裸にされて、露になった全身へキスを受ける。柔らかい唇の感触が熱く残像のように残った。白勢さんが楽しそうに俺の身体を触っているのをぼんやりと眺めていた。 流れてされるがままになっている。抵抗する方が面倒だから従っていたが、心のどこかで白勢さんに対する好意もあったと思う。 不快では無く、むしろ快感に繋がっているようだ。上着を脱ぎ露わになった白勢さんの逞しい上半身を思わず凝視してしまう。お腹も出ていない、スッとした裸体を見た途端、自分の顔が意識的に赤くなるのが分かった。 「最近は部屋の掃除をしてなかった、もしかして毎日布団を敷きっぱなしですか?」 仕事が忙しく、身の回りの家事で手一杯なため白勢部屋の掃除まで手が回らない。 久しぶりに入ったが、客間が物で溢れていた。お城のフィギュアをいつの間に作ったのか、薄暗い室内に姫路城が薄っすら確認できた。制作中のものまである。 「うーん、そんな訳ではないよ。今日は疲れて昼まで寝てただけ。それよりも行為に集中して欲しい」 大して好きでもない相手と身体を重ねることは今までも度々あった。 どうせ性欲を満たすための行為だろう。白勢さんは慣れたように俺の後ろに手を這わせる。あ、そこは……と思った時はもう遅かった。 手を避けるように後退する。 「あれ……柔らかい。あのさ、もしかしてさっき、別れる前までヤッてたとか。セックス直後に別れ話された……かな?」 図星で何も言えなかった。その通り。ヤッた後にフラれた。語弊はあるがヤリ捨てられたのだ。 「………何か悪いですか。そんな奴とは嫌ですか。元々そんな関係じゃないのに、説教とかごめんですよ」 「ああ……征士郎、ごめん。そんなつもりで言ったんじゃないから忘れて。ごめんな」 ごめん、とおでこにキスが落ちてきた。裸で抱き合い、まるで恋人同士みたいな甘い錯覚に陥る。 その後、白勢さんは半分反応していた俺のを躊躇いもせず口に咥えた。拒否する隙もなかった。腰ごとガッチリとホールドされる。 ポイントを舌先で突いたり、上顎で擦り付けてくるので、あっと言う間に射精感が太腿を伝い中芯へと集まってくる。 白勢さんのセックスに対する手慣れた感が段々俺を不安にしていた。 この人を好きになると自分が苦労する。本能的なものが俺に告げていた。

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