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第152話 甘いと切ない5
(なごみ語り)
東室長の話だと、うちの空間プロデュース業が河合さんとコラボして、写真集やパンフレット、CM等を展開するとのことだった。
最近の諒については全く知らなかったが、3年前に海外へ拠点を移してから有名な賞を獲り、現在は空だけでなく色んなジャンルの依頼を受けているとホームページのプロフィールには記されていた。
僕と別れた3年前は、奇しくも諒にとってはターニングポイントとなったらしい。
それで、たまたまアメリカの空港で出会った社長と意気投合して、今回の企画に結びついたようだ。運命の悪戯というか、運が良いのか悪いのか、巡り巡って諒と再開したことに複雑な思いを抱いた。
打ち合わせ後の帰りは、秘書室の女子達が諒を好奇心いっぱいで並んでお見送りしてくれたので、僕は出て行かずに済み、胸を撫で下ろした。
こうして諒が社長と差しで会うことも無いだろう。次回以降は広報部や開発企画部と個々に打ち合わせをするだろうから、秘書室に来ることもないと思われる。
問題はもう一つある。
この再会を大野君に告げるかだ。
よくあるカップルの約束事で、「気になること、思ったことは包み隠さず何でも言うこと」というルールはうちにもある。付き合いたての頃に、小さなすれ違いから喧嘩をした事があり、その際に約束をした。
諒は僕のことを忘れたいのだろう。
だから僕に再会しても知らないフリをした。
大野君には、言わないでおこうと決めた。余計な心配をさせたくない。たぶん会うことも無いから、何も起こらない。
頭を切り替える。終業後のデートにシフト替えをした。余計なことは考えない。
『なごみさーん、終わりました?早かったですね。いつものところで待ってますから、早く来てください。お腹が空きました』
『うん。すぐ行く』
仕事を大急ぎで終わらせて、エレベーターホールで隼人君に電話をした。
彼の声は僕の安定剤だ。聞くと安心して、何でも乗り越えられそうな勇気をくれる。
大丈夫。諒はもう過去の人だ。
僕は隼人君を心から愛している。
いつも待ち合わせいる会社近くの公園の駐車場を目指して歩いた。間も無く四駆の大きな白い車が視界に入り、僕は愛しい人を目掛けて走り出した。
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