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第164話 大切な人6
(大野語り)
早めに仕事を終え食材を買った後、急いでなごみさん家に行く。チャイムを鳴らしても出ないので、合鍵で中へ入る。河合に元彼という事実を突きつけられた時より俺は驚いた。パンツ1枚のなごみさんが何かを探していたのである。
セックスする時ですら常夜灯もNGで、電気を消すのがマストな人なのに、煌々と明かりが付いたまま、あの格好でいた時は固まった。っていうか、頭に血が上り鼻血が出るかと思った。相変わらず綺麗な身体に見惚れてしまう。
滑らかそうな白い肌に、程よく付いた脂肪と筋肉。昼間抱きしめたときの心地は良かった。裸で抱き合うと吸い付きそうな身体を目の前に俺は生唾を飲んだ。
俺はもう女の人では勃たないのかもしれない。女体には全く興味が無くなっていた。ちなみに他の野郎の身体はそれ以上に見たくない。正しくはなごみさんの身体でしか下半身は反応しなくなっていた。
「こんな格好でうろうろしていたら襲いますよ。服着てください」
咄嗟に足元にあったバスタオルを彼にかけて、晩御飯の準備に取り掛かる。
心臓がドキドキと波打った。思春期の男子かよ、と自分にツッコミを入れながら平静を装う。こうなると気を逸らすしかない。
知ってか知らずか、なごみさんは急いで服を纏い俺の元へやってきた。
「ごめん、隼人君。今日は帰ってくれないかな。僕さ、熱っぽいみたい。うつすと大変だから」
熱があるのに、あんな格好でふらふらしていたのか……?
やんわりと二の腕に触れてきた手は確かに熱い。心配になると同時に、今日のセックスはお預けかとがっかりした気分になった。いつでも臨戦態勢になれる息子は後でこっそり処理しよう。
「熱のある人を置いて帰れませんよ。俺が看病します。横になりますか?それとも何か食べます?」
熱に浮かされた赤い顔が少し考えた後、口を開いた。これまた熱で唇がいつもより赤い。
真っ赤なさくらんぼみたいだ。
「実はお腹が空いてる。軽く食べたいな。隼人君を見ていたいからここで座って待ってるね」
ダイニングの椅子になごみさんが座った。
後ろに視線を感じながら、なごみさんが好きな素麺を茹で、温かい麺つゆを作り、オクラとミョウガとネギを散らした。
「煮麺です。あっついからゆっくり食べてください」
「ありがとう。いただきます」
美味しそうに食べるなごみさんを見ていると再びムラムラしてきた。
人が食べている姿って、エロいなぁと思う。
食欲と性欲は違うようで似ていると感じた。
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