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第177話 渉の恋6

(渉語り) アイシングクッキーには快諾の返事を頂いた。彼女も子供に好きだと言ってもらえるのが1番嬉しいようだ。新城さんの連絡先を勝手に教える訳にはいかず、今回のみ僕が伝書鳩の役割をすることにした。 丁度まどか先生と飲みに行く日にクッキーが届くので、少し前に新城さんと待ち合わせをして渡すことにする。 僕が職場に出向こうかと提案したのだが、頑として新城さんは取りに行くと譲らなかった。 その日は朝から忙しく、予約がぎっしり詰まっていた。アスカちゃんにも患者さんが付いてきている。彼女の腕は確かなので、このまま真っ直ぐ育って貰いたいなと思っていた。その分僕も楽になるし、患者さんも増えて一石二鳥だ。 夕方、クッキーを受け取り、最後の患者さんを送り出すと、慌てて治療院を閉めた。 お待たせしてはいけない一心で待ち合わせ場所へ向かう。思いっきり走りたいのはやまやまだが、繊細なクッキーが割れたら大変だ。 気を使いながら急いで行った。 待ち合わせの公園の前には、既に新城さん親子が立っていた。 「わたるくーん、ここだよー」 あゆむ君が手を振り、傍らにはイケメン新城さんが微笑んで立っていた。アスカちゃんによると新城さんはスウェーデン人とのクォーターらしい。確かに日本人離れしている。 夜8時も近いのに、あゆむ君は相変わらず元気だ。もう少ししたら、電池が切れるみたいに寝てしまうのだろう。 「はぁ、はぁ……お待たせして、すみま、せん。あゆむ君、これどうぞ」 紙袋には透明の箱が入っており、色とりどりの動物クッキーが見える。見た途端、あゆむ君は目を輝かせた。 「うわぁ………ねえ、パパ見て。ミーアキャットだ。かわいいよぉ。たべてもいい?」 「待ちなさい。パパと待鳥先生の話が終わってからね。お手数をおかけしました。ありがとうございます。歩もありがとうは?」 「………わたるくん、ありがとう」 「いいえ。パパとお家で食べてね」 次回からは直接連絡を取れるように、彼女の連絡先を新城さんに渡した。 これで僕の役目が終わったため、その場を後にしようとすると、突然新城さんに腕を掴まれた。忘れ物でもしたかと辺りを見回しても、何も見当たらない。 な、何?背が高いから余計に怖く感じるんだけど。無駄にキラキラしてるし。 「あの……今度、歩も一緒に3人で食事でもいかがですか。僕達と友達になってもらいたいんです。最近引っ越したばかりで、ここら辺を何も知らないものですから、色々教えてください」 えっ、この僕と友達に……? 友達になることについてはつい最近も決意したばかりだった。交友関係を広げることは、別に問題ない。 「いいですよ。僕で良ければ喜んで」 「うわ、あ、よかった。歩も喜びます」 「わたるくん、またあそんでくれるの?」 「うん」 こうして僕達はまた会う約束をした。 時間に余裕があったので、ゆっくり歩きながら、まどか先生との待ち合わせ場所まで新城さん親子と一緒に向かう。あゆむ君を真ん中に3人で手を繋いで歩いた。 もし僕にパートナーがいて子供を授かることができたら、こんな情景なのだろうか。僕には想像もできない未来だ。不思議な気分に浸りながら、店の前で彼らと別れた。 ここまでは確かに記憶があった。

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