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第215話円と渉6
(円語り)
昨晩は夜通し探しまくった。
今度こそ本当にいなくなるかと必死で探しても、渉さんの行き先は見当もつかなかった。
脚力と持久力には自信がある。雲を掴むような広い範囲を走り続けた。明け方、寒さに震えて戻ると鍼灸院が目に入った。アスカさんがいなかったら俺はあの人を腕に抱くことはなかったかもしれない。
渉さんは俺のやることに何も言わない。歳上の余裕からか、俺のやりたいようにやらしてくれる。それでいて、仕事に関しては完璧を貫き、口出しもできないくらいストイックである。それがめちゃくちゃかっこいい。
俺は、考え方が幼い上に面倒見がいいため、高校の時に担任から保育士を勧められて進路を決めた。今では天職だと思える。特技は子供の言わんとすることが察知できることだ。
掴み処のない完璧な渉さんが、昔適当に付き合って別れた俺の元カノと揉めて、元恋人の元へ避難してしまった。原因を作った俺が1番悪いのは重々承知だが、渉さんの選択が衝撃的だった。なごみさんには何度か会ったことがある。人当たりが良く優しい雰囲気が滲み出ていて俺とは種類が違う知的な柔らかさがある人だ。
あぁ、俺は何をしてもあの人には敵わないのか……と寂しくなる。別枠だとは分かっていても男というのはいつでもどんな時でも1番でいたいのだ。
悔しくて感極まって涙を見せた時、渉さんが寄り添って『好きだよ』と包んでくれた。やっぱり余裕がある大人は、何をしても格好がいい。渉さんだけは誰にも取られたくない。
「渉さんって、なごみさん相手だとタチしてたんでしょう?ここ、使わなかったんだね。どっちが良かった?」
「あっ……うん……まどか、くんの……ゆびが、いい……ぁぅ……」
「もう、俺の指って……聞いたことと違う……こうして指が吸われるのを感じると、タチやってた気が全くしない。すぐ蕩けちゃうお尻が大好きなくせに、えっろい渉さん」
「え……ろく、ないって…………」
抱き合ったまま後孔を刺激し、渉さんの理性をゆるゆるにしたかった。
なごみさんなら抱けたんだ……という嫉妬が更に俺を駆り立てる。挿れた中指を両サイドから拡げた。伸縮する入り口は息をするように指を飲み込んでいく。
渉さんは俺の首に抱きつきながら、ピクピクと快感に震えている。口寂しくなった俺は、耳に舌を入れ音を立てて舐めた。渉さんの背中が反り、固く立った乳首が露わになる。
「ぁっ、みみ……だめ……だから」
「後ろ、拡がっているの分かる?このまま奥に行くよ。もっと声聞かせてね」
「えっ、声……出さなきゃいけない?」
「絶対に駄目。可愛い声が聞きたい」
「まどか君、いじわるだよね。あ、おく……来てる……もっと……」
「俺はいつも優しいよ。あなたには特段に甘い」
入った指が生温かいお湯を引き連れて、入り口と少し奥の気持ちよいところを擦った。
徐々に解れていく後ろと、息が荒くなる渉さん自身を興奮しながら眺めた後、指を出来るだけ早く出し挿れした。
ローションが出す水音とは違い、息遣いだけが快楽を教えてくれる。ピンク色に色づく頰がものすごく色っぽい。
渉さんは俺の腹に中芯を擦り付けていた。腰の動きが段々早くなっていく。
「や、やだぁ……ふぅっ……あ、そこは、だめ……あん、ん………でるっ……」
指が何度もキュッキュッと締め付けられて、渉さんが弛緩した。
イッたのかな。渉さんの雄から勢い良く出た精液が俺の腹に触れた気がした。
「…………まどか君、何してんの……?」
「いやー、浮いてくるかなと思って。沈んじゃったかも」
「もうっ……ばか」
探してみたけれど、浮いているのかいないのか白い湯船からは気配が感じられない。
ただ、渉さんが恥ずかしそうに俺の頭を軽く叩いたのが可愛くて仕方なかった。
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