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第223話 大切をきずくもの6

(なごみ語り) 「なごみさん、すご……ぁ、興奮します……」 「んっ……ふぅ……くちゅ……」 その日の夜、約束通り隼人君がうちに来た。嬉しくなった僕は、彼のモノを口に咥えて、心を込めて奉仕する。丁寧に竿を舐めて、唾液で濡らした後、広がる苦い味が味わった。先の部分を内頰でこすると、隼人君が気持ちよさそうに呻いで、腰をぐるりと動かした。 「……このアングル、いつ見ても慣れない……王子……口離さないで下さいね」 王子と言われて、驚いて口を離そうとすると、髪の毛をグッと握られて、頭を固定された。今の僕に王子は禁句だ。女子にそんな呼び方をされていると思うと、寒気がする。 恋人に呼ばれたくない呼び名だ。 「それにしても、佐倉さんだけでなく、野元まで許すなんて、なごみさんもお人好しですね。あの2人は相当しつこいから、飲み会をやらなきゃ納得しないですよ。酔った王子を人の目に晒すのも嫌なのに………あぁ、喉奥、ヤバい。ぁぁっ……イく……んんっ」 王子、王子と煩いので、喉奥で締め付けて早く済ませたかった。嘔吐きながら、隼人君の精液を喉に流す。おしゃべりな口を早く黙らせなくてはいけない。 口端に垂れてきたものを拭って、隼人君を睨んだ。ハラリと垂れた濡れ髪が鬱陶しくて掻き上げる。 「王子はやめて。見た目しか見てない人達には嫌気が刺す。外見で判断されたくないんだ」 喧嘩腰の僕に、隼人君が目を細めて頬に口付けをした。そのまま舌が顔を伝い、僕の唇をペロリと舐める。舌先だけで短いキスをした。 「これは、僕の持論なんですけど……内面って外見に滲み出てきますよね。だから、洋一さんは、優しくて、素直で、格好いいから、王子って呼ばれてもしょうがないと思うんですよ。みんなが貴方の魅力に気付くのは当然なんです。俺は面白くないんですよ。でも、そんな素敵な人が俺の恋人なんだと思ったら、にやけてしょうがない」 優しい声はすんなりと心に入ってきた。隼人君が喜んでくれたならいいかなと、一瞬揺らぎそうになる。でも解せない。 「僕はそんな価値のある人間じゃない」 『王子様』なんか言われて、目立つような人間じゃない。ひっそりと仕事して、恋人と小さな喜びを分かち合うような暮らしで充分なのだ。 そんな僕の腹の底を見たかのように、隼人君がベッドに座った僕に跪いた。そして、シンデレラにするように、足の甲に軽くキスをする。 「貴方がそう思わなくても、俺にとっては価値のある大切な人なんです。惚れた相手が素敵だと思わない訳がない。受け入れなくてもいいですが、そんな自分がいることも知っていてくださいね。俺の王子様。」 「…………僕が王子なら、隼人君は何?王様?」 「家来か執事ですかね。それしか思いつかない。側にいれれば何でも。あの……続きいいですか。今度は俺の番です。舐めさせてください。させてくれますよね?」 「…………やぁ、あ、また……ぁぁっ……」 いつの間にか、彼に裸を晒すことを平気だと思えるようになっていた。心の殻が隼人君を前にすると薄くなり、中身だけでも安心してしまう。彼は決して僕を傷つけたりしない。 気持ちよく蕩けさせてくれる。 彼の口が、僕のモノを咥えた。僕と付き合う前はされる側専門だったろうに、嫌な顔一つせずにやってくれる。 「は、やと……くん、だめ……うしろ、疼いちゃうから……ぁぁっ……」 お尻を揉んでいた指が、奥へ侵入を始めた。求めると、それ以上の反応が返ってくる。 本当に幸せだなと思った。

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