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第248話夏の宵に君へ伝える5
(なごみ語り)
まずは片付けである。
黙々とファイルを棚へしまう。散らばった文房具やゴミを、捨てるものと使えるものに分ける。憎悪を込めて投げられたような書類を集めたところで、半休の比嘉さんが出社した。
比嘉さんは、沖縄支店勤務が長い。好奇心が旺盛で物事を客観的に見ていた。
「ほんと勘弁して欲しいです。あの支店長は曲者と思ってましたが、あんなことになるなんて。信じられない。和水さんもそう思うでしょう?」
「僕も驚きましたね」
「真面目に仕事している人が馬鹿みたい。早く今後の処分を決めてほしいです。不倫が会社でバレて、失踪するなんて子供のすることですよね。天罰が下ればいいんです!!」
社長へは先程電話で報告した。支店長の行方は未だ不明である。沢山の人に迷惑をかけたツケは、社会人として責任を取ってもらわねばならないだろう。逃げていては何も解決しない。
「とにかく、通常業務ができるまで片付けましょうか」
「パソコンも壊していったんです、あの子達は。手のつけられない暴れようでした。可哀想だけど、自業自得でしょう。最低男に振り回されて、失ったものは大きいわね」
廃棄と書かれたダンボールへヒビが入ったパソコンのモニターを入れる。
事務所内で、支店長のデスク周りが1番汚なかった。この方は今どこで、どんな思いをされているのだろうか。普通の人間らしく後悔しているといいのだけれど。
作業中、そう言えばと思い出したかのように比嘉さんが話し始めた。
「支店長って他にもオンナがいたんじゃないかと思うの」
「えっ、まだ居たんですか」
「だって、3人とは違う香水の匂いをさせて外回りから帰ってきたこともあったもの。タチの悪すぎる病気ね。今はそこへ逃げ込んでいるかもしれない」
「だったら尚更行方が分からないですね」
「奥さんに探してもらうしか無いわ。今こそ夫を取り戻す時よ。ま、要らないだろうけど」
一体、何人と交われば、心も身体も満たされるのだろうか。
唯一に愛してもらえれば、他は目に入らない。あれもこれも欲しいとは、比嘉さんの言う『病気』なんだろう。もしかしたら一生満たされないのかもしれない。
結局、夕方までかかって半分の片付けが終わった。
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