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第257話夏の宵に君へ伝える14

(なごみ語り)  敏感になっている後孔の上を行ったり来たりしてから、焦らすようにゆっくりと隼人君が挿ってきた。 「…………はぁっ……ぁぁ、ん……」 「すみません……ちょっ、と余裕ないです……動きますね」 余韻に浸る場合も無く、抽送が始まる。 「ぁ、ぁ……ぁん……ぁ、ぁ……ぁっ……」 本当に余裕をが無いらしく、黙々と腰を動かしている隼人君を下から見上げる。 眉間に皺が寄っていて、限りなく男前である。理性が飛びそうで飛ばない時に、彼は色気を発する。すでに隼人君の匂いで、酔いそうなくらいだった。 「なぁに余裕そうに見てんすか」 「…………かっこいいなぁって思って」  ふざけたように頬をぺちん、と軽く叩かれた。 「ふはっ……照れた?」 「照れるもなにも、俺からしたら洋一さんがお化けです。フェロモンみたいなの出してますよね?凄すぎて、俺の正気が無くなりそうだ」 僕の足を折りたたむようにして、ぐいと腰を押し進める。お尻も浮き上がるこの体勢は、奥まで挿いる。なんとも言えない感覚が腹へ広がった。 思わず彼の胸を掌で押してしまう。 「お、く……だめ……だって」 「だめ、じゃないでしょ。全然キツくないし、寧ろ奥へ誘われてる感がありますが」 ギシ……と音を立てて前のめり、僕へキスをする。肌と肌を重ねると、心も通じ合える気がする。舌を伸ばし、精一杯彼に応えた。 「洋一さんの蕩けそうな顔が大好きです。いいトコロを擦ると益々溶けそうになる」 「僕も大好きだよ……ぁ、はぁ……ぁっ……」 「目が虚ろになるの、本当に可愛い。愛してます」  事実、意識が飛びそうになるので、会話の記憶は殆ど無いが、隼人君が愛の言葉を囁いてくれたことは、心に刻まれる。胸へ温かい火が点ったかのように、ふわふわと幸せが余韻で残っているのである。 「ぁ……もうイきそうです。ごめんなさい」 と、隼人君の動きが一層速くなった。 彼の荒い息遣いと僕の喘ぎ声が、日没を迎えた室内に響く。 この時ばかりは、僕たち2人は獣のように快楽を貪る。迎えるための掬うような腰つきになっていた。 「あっ……僕も、イきそ……ぁぁっ……はや……それ、だめ……な……ぁ、んっ」 掴むところが無く、手元のシーツを必死に握る。 背中を弓なりに逸らすようにして快感に耐えた。全身へ電気が走ったように気持ちよさが駆け巡る。苦しいくらいの絶頂は迎えるだけでも辛く、体力の消耗が半端ない。これを何回もやられたら翌日は確実に腰が立たなくなる。 ビクビクと僕のナカで隼人君のモノが爆ぜる。生温かい粘液が注入される感覚があったのち、ぐっと腰を押し付けてから、抜かれた。 「やっ……」 下半身はまだ甘く痺れているので、あんまり触られたくないのだ。知ってるくせにいつもやられる。 「…………いきなり抜かないでって」 「あちこち敏感になってますね。反応見たくてやってるんで、気になさらず」 イタズラっぽくワンコが笑う。 「…………ばか」 僕は上体を起こした。股関節がやや痛い。だるい身体をシャワー室まで引きずるも、志半ばで挫折した。ベッドから出られないのだ。 「どうしました?」 「ちょっと休ませて。動けない」 「このままもう1回するという案もありますよ」 「もう……却下です。ふふふ」 纏わりついてくる大型犬をどうにか躱しながら、ベッドで目を瞑った。

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