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第263話 StayHome3
今日の朝ごはんは和食だ。作り主の気分や食べたいものによってメニューは変わるが、隼人君と僕は食べ物の好みが似ている。大したものは作れないが、僕が作っても彼は美味しく食べてくれた。
「なごみさん、お尻はいつから痛かったんですか?」
唐突な質問に、思わず豆腐の味噌汁で火傷しそうになった。
「いつからって…………うーん、昨日、かな」
僕は適当に答える。しかし、恋人に対して『察してもらう』といった回りくどいことは、逆効果であると分かっていた。
以前、変な意地を張って家出寸前の事態に発展したからだ。隼人君に対しては、ストレートに言葉で伝えた方がよいと思っている。
「あんなに気持ち良さそうにしていたのに、中の粘膜は傷付きやすいんでしょうか」
「誰も中って言ってないよ」
「じゃ、外ですか」
「…………」
「すみません。でも気になるんです。行為の最中と後は、どっちが痛かったですか?最中なら、なごみさんに申し訳なくて。痛いのを我慢させていたのかなって。本当にすみません。俺の独り善がりです」
「……………………」
真摯に謝られ、僕は申し訳ない気持ちになった。彼は何も悪いことをしていない。
「そうじゃなくて。違うの」
「…………????」
「在宅ワークになって、ずっと一緒にいるでしょう。今までこんなに長く居ることなくて……勿論、毎日楽しいんだけれど、プライベートと仕事の区別が曖昧になって、嫌だった。隼人君との距離が近すぎて、ふわふわ夢見心地の毎日で足元が浮いてる感じが、何となく……そんなことしていていいのかって、罪悪感を感じてしまうんだ」
「……………………じゃあお尻は」
「痛いけど、気にする程でもない」
隼人君は長いため息をついた。空気が抜けるように、見るからにしゅんとなっていく。
なるべく感情的にならないよう伝えたつもりだ。だが、隼人君は叱られた子供のように口をつぐみ、頭を垂れた。
「俺、隣になごみさんがいる生活に嬉しくて舞い上がってました。もうちょっと節度を守ります。ごめんなさい」
「自覚はあったんだ」
「ええ……まぁ。拒否されないから、いいのかと」
「じゃあ、メリハリのある生活を目指そうね」
「あの、毎日やらないほうがいいってことですよね。できればやる日を決めてほしいです」
「…………週末はどう?」
今日は木曜日だ。今日明日は無しで、土曜日はどうかと思って提案してみる。これでもかなり譲歩したほうだ。
「週末…………分かりました。頑張ります」
「今日明日は僕も休みなんだ。散歩したり外で運動してみよう。健康的に汗を流そうよ」
「セックスも十分健康的です」
「はははっ、そうだね。天気もいいし、外の空気を吸いに出かけよう」
「はい」
隼人君は分かってくれた。僕は安堵する。
こうして話し合いは揉めることなく和解で終わった。
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