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第265話StayHome5
小さな息抜きは終わった。渉君達に別れを告げ、徒歩で自宅へ帰る。
帰り道は、人気の無い所で手を繋いだり、ハグをしたり、いつもよりスキンシップが多かった。渉君の言った通り、僕の恋人は人寂しいようだ。そんなとこも可愛くて愛しさでいっぱいになる。
夕飯も並んで作り、片付けも一緒にやった。任せきりにしていた一部の家事を僕も積極的に手伝い、なるべく時間を共有するように務めた。
不思議と僕は、今の状況は苦になっていない。仕方のないことだと割り切れていた。仕事も、在宅で十分間に合う。寧ろ、ストレスが減ったため前より健康なくらいである。
世の中と切り離されてしまった個体は、ふわふわと家の中を浮遊しているようだ。
心も身体も満たされているからか、制限のある生活は一種の現実逃避に似ていた。恋人と籠る生活は『世間から隔離された幸せそのもの』である。
「今日も身体を動かしたからか、このまま寝ちゃいそうです。いっそのこと、何日我慢できるか挑戦しようかと」
「…………え」
お風呂上がり、隼人君が爽やかな表情で笑うものだから、僕は拍子抜けする。
どうやら煩悩から抜け出たようだ。
「いいの?平気?」
「今のところ大丈夫です。テレビ見ながらくっついてもいいですか」
「いいよ。そう。久しぶりに晩酌でもどう?」
「いいですねー。昼間に運動したせいで罪悪感もない」
リビングに缶ビール、おつまみを並べる。キムチや、冷奴など、即席の簡単なものを揃えて乾杯をした。
僕達ら自宅で晩酌をあまりやらない。というのも、外で飲む機会の方が多いからだ。こうして休日にお酒を飲むのも悪くないな、と彼を見て思った。
隼人君はビールを好んで飲む。僕は冷蔵庫に入れっぱなしだった白ワインを開けた。
丁度、気になる映画がやっていたので、隼人君の膝の間に収まりつつ、鑑賞することにした。
「主人公がこの先どうなるか知ってますか」
「…………知らない。隼人君は知ってるの?」
ニヤリと、さきいかを咥えた彼が笑う。
「劇場へ観に行った寺田さんが無理やり教えてくれました。知りたいなら教えますよ」
「知りたい。眠くて最後まで観てられないと思うから」
既に程よい睡魔に包まれており、後ろの隼人君にもたれかかる。宅飲みは酔いが回りやすい。
「飲むとすぐ赤くなりますね。色が白いから、尚更目立つ」
「な、何、急に……」
うなじにキスを落とされた。くすぐったくて振り向く僕に、今度は唇が重なる。
「可愛いなぁ。酒に酔った姿を見せてくれるのも、彼氏の特権ですから。本当に可愛い。いい匂いがする」
「ふふふ、だからくすぐったいって」
そう言って髪を撫でる隼人君は、明らかに色を含んだ視線を僕に送ってくる。
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