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終
匠の後頭部に手を回し、もう片方の手で匠の滑らかな肌を優しく撫でる。肌こそ綺麗であるが、オメガの華奢なカラダとは程遠い、匠の男らしいカラダがじんわりと暖かさを俺の手に伝えてきた。何故かそれが余計に興奮を誘う。
顔の角度を何度か変えながら積極的に何度も唇を合わせ、肌を撫でていた手で匠の肩を後ろへとそっと押す。きっと相手はその力に逆らわずカラダを倒すだろう。そうして倒れても、後頭部を支える俺の手がクッションになる。全てがスマートな動作だ。
そう、これがいつもの流れだ。恋人と営みを行う、いつもの流れ。だが、
「ぶえぇえ!?」
何が起きたか一瞬では理解出来なかった。突然視界がグルンと回り頭の中が揺れる。そしてしっかりと目を開けた時にはもう俺は床に倒れており、視界には匠と天井が映り込んでいた。
「夕士、それじゃあダメだ」
「へ…ちょっ、た、たくンむぅっ!?」
俺の上に乗っかったままの匠が再び唇を重ねてきたかと思うと、紳士とは言い難い動きをする舌が俺の口内を暴れまわった。逃げ惑う俺の舌を捕まえると吸い付いて、離されたかと思うと器用に甘噛みをする。溢れた唾液も丁寧に舐めとり、最後に唇に噛み付かれる。
痛みで思わず口を開ければ再び中を荒らされ、俺は息も絶え絶えになりながら匠に答えた。
夢中になっていた。
相手が親友であることも忘れて、俺はそんな荒々しい、痛みまで伴うような匠の口付けに我も忘れて夢中になっていた。
漸く俺の唇を開放した匠が、その白い頬を桃色に染めて俺を見下ろしている。なんて妖艶な男だろうかと、自分の親友ながらもゾッとした。
「紳士に振る舞うのも良いが、オメガは強引なのを好む奴が多い。夕士は男のオメガに好かれやすいだろう? オメガの男が内側で感じるポイントは、女より遥かに少ない。だがそのくせ快楽には非常に貪欲だ。今までの相手も、きっと夕士が好む紳士的な触れ合いでは物足りなかったんだろう。でも大丈夫、性は違っても男は男。俺たちとカラダの造りは殆んど変わらない」
つまり、と言って匠が俺の胸の突起を舐め上げた。
「ひぁっ!?」
「自分が感じる場所を覚えて行けばいい」
「あっ! ちょ、ちょっとま、待てって! ひっ」
悲痛な静止の声も聞かず、長い指と舌で肌を犯していく匠に恐怖で涙ぐむと、それに気付いた匠がニヤリと笑う。
「良いか、夕士。男を抱くのが下手な奴は、抱かれる側を経験すると上手くなるんだ」
「だか…抱かれる、側…?」
「どこを擦れば気持ち良いのか、どんな強さが気持ち良いのか。奥なのか、手前なのか、ゆっくり動くのか、それとも早く動くのか。それを身をもって経験するんだ。上手くならない訳が無いだろう?」
もうオメガに馬鹿にされずに済むんだ、やってみるよな?
そう言って舌なめずりした匠に、俺はどうしてだか頭が真っ白になって思わず…。
「う、うん…」
こうして訳も分からず首を盾に振ってしまった俺が、その後どうなったかなんてそんな事…
「絶対に気持ちよくさせてやるよ、夕士」
どうか頼むから、聞かないで欲しい…。
END
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