彼は獣のように何もかも乱暴だった。早急に脱がされた服は、彼の力の強さで首回りがだらんと伸び切って、ベルトは留め金の部分が破損していた。 床に散らばったボタンを、ゴツゴツした大きな指先で集めているのをベットから見ながら、この男が愛おしいと思った。大きくて乱暴者なのに、可愛いとさえ思ってしまった。 『君って、Sだよね。僕だってセックスは初めてなのに』 『初めてなのか？　濡れてたじゃねえか』 ボタンをテーブルの上のハンカチの上に置きながら、彼が驚いていた。 『……知らないのかい。オメガは男でも濡れるんだよ』 『お前』 『君はαだろ。僕を支配しようと全身から感じられた。火遊びはほどほどにしないと、……学生の分際で子供ができたら大変でしょう』 ボタンを引きちぎられた服をたたんで、彼の大きなTシャツを着る。 ぶかぶかだけど、ベルトが壊れていたズボンを隠せるのでちょうどよかった。 彼はまだぼーっとしていた。こうやって一目でヤれそうな人を部屋に連れ込むたびにこんな風に乱暴に服を脱がしているのだろうか。 『運命だ』 『は？』 『運命だ。俺は、お前しかいねえ。どうしても手に入れたかったのは、その甘い匂いは――運命だったからか』 　感動で打ちひしがれている彼を前に、今度は僕が目を丸くする番だった。 『俺と結婚してくれ、那津。お前しかいねえ』 『うわあ、抱き着かないで』 あって一日で寝てしまった僕も僕だけど、結婚なんて舞い上がれる彼がすごいと言葉を失って、しっかりと拒否するはずができなかった。 凶暴な虎が唯一僕だけに優しいなんて、優越感も感じられた。 セックスは相変わらず乱暴だったけれど、どこか切れたり腫れたりするわけではない。ただ一滴も出なくなるまで腰を振り続ける感じだ。避妊はしていたけれど、いつか妊娠しそうで怖かった。