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第8話
嬌声なんてはしたない。男のくせに自分から腰を振って、乱れて甘えておねだりして。
プライドなんて壊される。自由なんてない。体の熱を発散したいために恋人の体を利用する。
そんな浅ましい僕の体が、嫌いだった。
「ううっ……ううっ」
悲しくてこぼれた涙は、誰のせいだろうか。
全部僕のせいなのに、彼を都合よく発情期に求めるぼくのせい。
抑制剤を隠すなんて、そんな幼稚なことをさせるのは僕のせいだった。
「那津? おい、那津!」
それから本当にすぐに七海は帰ってきてくれたけど、泣きはらした僕は発情していなかった。
涙が止まらなくて、ぼやけた視界の先の、心配そうに覗き込む七海が見えるのに輪郭がはっきりと映らない。
ただ熱が酷いのと、吐き気が止まらず病院へ連れていかれてそのまま入院した。
夜中に何度も吐いて、軽い脱水症状を起こして彼がいると安心するのに不安で何度も飛び起きた。
七海が、事情を看護師さんに話したのだろう。
看護師さんが抑制剤を手に握らしてくれた途端、声を上げて泣いた。
そのまま看護師さんに背中をさすられ、ようやく朝方眠りにつけた。
僕はその日から発情はしなくなった。
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