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第9話

「っよいしょ」 片づけを終えて、花屋の裏口から鍵をかけてバス通りに向かう。 僕は退院後に仕事を辞めて彼とはすぐに同棲を解消して、親戚の花屋を継いだ。 おじいちゃん一人で道楽でしていたような花屋だったから、売り上げはそんなに良くなかったけれど、週に二回ハ―バリウムやフラワーアレンジメント教室をして生計を立てている。 ちょうど一年ぐらい前になるだろう。はっきりと別れようと言わなかった僕に、『そんなに俺と一緒にいるのが辛いなら距離を置こう』と彼から言ってくれた。 今まで僕のいい加減な行動に傷ついていたのは彼もいっしょなのに。 彼から言わせてしまった。 僕は色あせていく花を、彼との楽しかった思い出に見立てて処分していこうと思っていた。 なのに彼はどんなに色あせてもその花をすべて買っていく。 どんなに辛くても、彼にとって花は大切にしたい思い出なんだ。

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