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第11話

「は?」 「必死でボタンを大きな手で集めてさ。ふふ。可愛いよね」 どこに連れていかれるのかわからない。怒って監禁されるのかもしれないと、僕は頭のどこかで彼を信頼していない。 この関係が崩れたのは僕のせいだと、気づいている。 「確かに君のセックスは乱暴だよ。覆いかぶさるとき、怖いなって思う。だって君は190センチ近いでしょ。僕は172センチ。20センチ差で、筋肉だって差もあるし。オメガはαに逆らえないしね」 「てめえ、そんなこと思ってたのかよ」 「でも、その乱暴な君が、セックス以外では僕を優しく恐る恐る触るんだ。その大きな手が僕の髪をくるくる指先でいじるの、すごく好きだし。愛おしい」 「……」 着いた先は、三階建てのビル。彼の建築デザイン事務所だと理解した。 目的も言わずにつれてきて、僕に察しろって言いたげな君の大きな背中が今は小さくてかわいいよ。 「自宅に連れて行ったら、俺は乱暴者だから自分を抑制できる自信がない。から、事務所だ」 「あはは。素直だね」 「お前と違って俺は素直だよ。本能に素直に生きてきた」 裏口から鍵を開けて入ると、二階に続く階段だった。 その階段を靴のまま上がると、途中の壁に絵が飾っている。 よく見ると、絵ではなく押し花だった。売れ残った花を彼は、大切に心の中に閉じ込めて彼の中では色あせないでいるんだ。 「七海」 「なんだよ、急に」 二回の鍵をあけようとしていた彼に後ろから抱き着くと、驚いたのか手に持っていた花を落とした。 散らばって階段に落ちていく花を、大きな手で一本一本拾っていく。 僕はそれを一番上で体育すわりで見ていた。 「……七海」 「んだよ」 「……君が好きだよ。ごめんね」

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