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第14話

一輪一輪大切にしてくれる彼だ。 信じていいのかな。 「僕、発情がもう一生来ないかもしれないけど、それでもいい?」 「おう。発情期じゃなくても受け入れてくれるなんてα冥利に尽きるだろ」 「まあ、君がそう言うなら。僕も君に言うことがあるよ」 一輪、彼の持っている花を抜き取ると簡単な結び方で彼の薬指に花を結び付けた。 「僕と結婚してください。粗暴で可愛い僕の恋人」 「てめえ」 言いながら、ボロボロと泣いた僕を彼は抱きしめた。 それから顔の輪郭を大きな手でなぞると、恐る恐る触れるだけの優しいキスをくれた。 抱きかかえられて連れていかれたのは、普段彼が仕事をしているであろう社長室のソファだった。 彼がソファの腕置きの部分を開けてスイッチを押すと、ベットになった。 「仮眠するときに使ってるんだ」 「ふふ。聞いてないよ」 バツが悪そうに彼がコートを脱ぐ。少し彼も緊張しているのが分かった。 「待って。僕が脱がしたい」 「……あ、ああ。でも無理ならその、イチャイチャってやつで俺は」 「僕も分からない。もし怖いなって思ったらイチャイチャに変更するから」 彼のコートを脱がして、ベストのボタンも外して脱がせて、ネクタイを掴んだ。 「え、あれ? えっと」 「那津、苦しい」 「ちょっと待って、我慢して」 「……わん」 首輪みたいに思ったのか、彼が犬のように吠えて甘えてくる。 するすると背中をなぞるだけで、脱がそうとはしてこないのが、これまでの反省を生かしていると言えよう。 偉そうにそう感じていたが、ネクタイを脱がせた瞬間、一年ぶりの彼の甘い香りが首筋から香ってたまらなくなる。 ああ、僕は本当にこの人が好きなんだなって感じさせてくれる。

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