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スペードのジャック

** 全国模試は常にトップ 部活に所属こそしていないものの毎度助っ人に呼ばれるほどの運動センス 男だろうが女だろうが魅了してしまう甘いマスク この学園で最高にして至高の男 俺が転校してきたこの学園には、そんな風に呼ばれる素敵な方がいらっしゃるんだ。 と熱烈に話してきたのは誰だったか。 生憎、俺は馬鹿な人間のことは覚えない主義だったからそいつの顔も名前も覚えてない。 前の席に座っているが全くこれっぽっちもこいつの情報は頭に入ってない。 その日の昼。 どうも俺のことを気に入ったらしい購買のおばちゃんから大量にパンをもらった。 もらいすぎて前見えないんだが…? なんとか階段を上がって資料室をすぎたあたりで誰かとぶつかった。しまった、てっぺんが崩れて顔に…。 大丈夫か?とのぞき込んできた顔に浮かんでいたのは笑顔。 ぞわりと背筋が泡立つ。 この笑顔。薄い。薄っぺらい笑顔だ。 薄っぺらい笑顔は見ていて虫唾が走る。 何事かペラペラと口に出しているが面倒だ。 「そこ、邪魔。」 最低限の接触で教室に戻る。 この学校にもいるのかああいうの。 まあ当たり前といえば当たり前か。えらいとこのご子息なら愛想笑いの日つつやふたつできないとやっていけないんだな。多分。 もらったパンをもそもそ食べているとクラス委員の香取がやってきた。 「二宮、今日放課後空いてるか?」 「放課後?」 これといった予定は無いが、何かあるのだろうか。 「阿佐ヶ谷が君に会ってみたいと言っているんだ。」 「阿佐ヶ谷…?ああ、あのなんでも出来るマンか。」 なんでも出来るマン?と香取が首を傾げるが気にせず食べる。 「別にいいぞ。俺もちょっと気になってたし。」 放課後待ってみたらそこに居たのは 「俺は阿佐ヶ谷。阿佐ヶ谷帝。いやぁ、顔よし頭よし運動神経よしのイイ男が入ってきたってもっぱらの噂だったから今のうちに仲良くなっとこうと思って。」 昼間の薄っぺらい笑顔の男だった。 なんでこいつだ。 ニコニコと擬音がつきそうな笑顔でこっちを見ている彼が阿佐ヶ谷? なんだろう、どっと疲れが出てきた。関わりたくない。ので、バッサリ切ってなかったことにしよう 「俺は、自分の本心を隠すために笑うやつは嫌いだ。」 「…………は?」 この手のやつは図星をつかれると怒って立ち去ることが多い。 「精々物珍しいやつが来たから品定めしてやろうってところか。仲良くなっとこうなんてこれっぽっちも思ってない。だからそんな薄っぺらい笑顔を貼り付けてるんだろ。」 学園のキング 阿佐ヶ谷帝 学園内で一番のできる男というのは一体どんなやつだろうと思っていたら、 「君面白いね。俺のおもちゃにしてやるよ。」 何様俺様を地で行くナルシスト野郎だった。 「断る。」 自分の本心を隠すために笑うやつは嫌いだ。 大嫌いだ。 というかおもちゃってなんだ。俺は人間だ。訂正しよう。 ナルシストくそ野郎だ。

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