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** その翌日、俺は担任に家庭の経済状況を鑑みて学校をやめる旨を伝えた。すると 『特待生制度で編入できる学校がある。』 と言われた。 出されたパンフレットは俺の知らない学校だった。 なんでも隣県にある超のつくおぼっちゃま学校らしく、全寮制の男子校で成績次第では特進クラスに編入でき、更に学費寮費も免除されるらしい。 これは、 成績よかったら親が送ってくれた学費そのまま全部小遣いとして使えちゃうぜ☆ というアホな考えから始まったらしく、本当にすべて免除されるとの事だった。校内にある自販機と購買以外のものには金がかからない。そりゃ誰でもやろうと思うよなぁ……。 中学生の弟二人に高校生の俺を抱えた家庭の食費は相当なものだし、弁当代もバカにはならない。 編入試験を受けてそちらの学校へ入ればタダで今より高いクラスの教育を受けることが出来る。願ったり叶ったりだ。 だが、それでは家の収入は減らないが増えないし、俺が働いた方が家庭が楽になると思うんだと担任に告げた。 「でも、もったいないじゃないか。二宮せっかく頭いいのに……。親御さんだってここで二宮が家庭のために自分を捨てるのをいい顔しないと思うぞ?」 心配そうな困り眉に、はにかんだというか、含みを持ったというか、形容しがたい笑顔。 担任のその表情になんだかよくわからない気持ちになった。 1度三者面談をしようという話になり話はまた後日となった。

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