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** 数日して、進路指導室で三者面談をした。 隣県の山奥で、全寮制。 盆と正月しか帰省できないという条件に父母はあまりいい顔をしなかった。 いくら金がかからないとはいえ、目の前の家計は火の車状態。 収入現状維持と、就職して稼ぐなら断然後者だろう。 ごうごうと火が燃えているのは見るよりも明らかなのに頷けるはずがなかった。 学費がどうのこうのじゃなく、今働き手がいないと家が破綻してしまうというのに担任はなかなか折れなかった。 食費にも学費にも困らないし、今よりもっと高いレベルの教育を受ければ国公立大学にも特待生で受かれるかもしれない。 そうすればいいところに就職できる可能性も高くなって家計を助けてやることが出来る。 と真剣な顔で話し、 今辞めたら最終学歴は中卒。 この中途半端な時期に雇ってくれるところはないし、ましてや俺はまだ15歳、なおさら雇ってはもらえないだろう。 と眉根を潜めて口に出し、 就職するにしたってここいらでは中卒の未成年を正社員で雇ってくれるところはたかが知れているか、碌でもないところだ。 ブラック企業に務めて薄給に喘ぐことになるかもしれない、もしかしたら過労死してしまうかも。 と心配そうにこぼし、 だったらまだ頭の柔らかいうちに知識をいっぱい蓄えてから戻ってくる方が時間は少しかかるがつかめる金額は天と地ほどの差がある。 と諭すように言い、 「ですので、私はぜひとも編入をおすすめいたします。ご家庭の事情を鑑みて、かかる費用は最小限に落として、最大限の利益を得られる道だとは思いませんか。」 と前のめりに進言してきた。 よく動く表情筋だな。と思った。 教師が自分の受け持つ生徒の将来を案じて宥め、今いるところよりも更に高いレベルへ押し上げてやった。 という話は聞かないでもない。 両親もそんなに熱心に仰ってくださるなら……。と、俺の進学を許可した。 そこからはトントン拍子に話が進んで、俺は2年生の四月にあちらへ編入する試験を受けることになった。

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