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笑いながら話す担任の言葉が、一瞬理解出来なかった。
箔が付く?
そうか、俺がいいところに行くことで担任の評価も上がるのか。
でもそれがどうした?
自分の評価をあげるために俺に接していたってのがそんなにショックだったのか?
別に普通だろう。部下が上司におべっか使うのと一緒じゃないか。
何か、もやもやする。
「え?大丈夫大丈夫。たとえ辞めちまったとしてもこっちは知らぬ存ぜぬで通せばいいし、それこそ借金で首が回らなくなって一家で夜逃げしたとか言っときゃいーんだよ。」
ガラガラと何かが崩れていくような気がした。
別に、こいつが特別だったわけじゃない。ただちょっと仲がいいだけの教師と生徒。それ以上でも以下でもない。
でもこいつはトドメを刺しに来た。
「ま、実際に夜逃げしそうな夫婦だったけどなぁ。無計画にぽんぽん子供作りやがって、ちゃんとゴムしろよって感じ。上二人は万年留年生とぷー、下はやんちゃ盛り6人兄弟で、まだ腹ん中に3人いるんだとよ。どんだけ産むんだよ。動物かっての!頭がいいのは次男だけ。」
なんだこれ。
ゲラゲラ笑いながら俺の家族のことバカにしてんのか。こいつ。
崩れていった何かに火種が投下されて、一気に燃え上がった気分だ。
でも、頭は逆に温度が下がっていくようだった。
こいつは、俺のことも、俺の家族のことも、何一つ考えてなかった。
俺に熱心になってたのは、ただ単にそれが自分の出世に繋がるから。
笑顔が薄く感じたのは、そこに本心がなかったからだ。
こいつが信頼出来る相手じゃないって見抜けなかったのが1番腹が立つ。
取り敢えず諸々の作業をその場で済ませてきりの良さそうなところで声をかけた。
そして3月、俺は藤沢学園高等部に編入が決まり、担任は今年度いっぱいで依願退職となった。
俺は特に何もしていない。ただ、うちの妹が引くピアノの動画と、俺一家の悪口をべらべら喋る担任の動画を間違えて学年ラインに貼り付けただけだ。
別にわざとじゃない。
俺が中身の伴わない薄っぺらい人間に嫌悪感を感じるようになったのは完全に担任のせいだが、別にもう怒ってはいない。
許す気はまったくないが
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