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** そして冒頭に戻る訳だが、阿佐ヶ谷の笑顔はまさに担任と同じ中身の伴わない表面上のものだった。 頭がいい 才能がある それだけでいい人間とは限らない。 気になっていただけだったのに『おもちゃにしてやる』とか痛々しいことを抜かしてくる人間にもう興味はない。 というか嫌悪感しかない。 気持ち悪い。 関わりたくない。 こっちがそう思っているのに阿佐ヶ谷はそうではないらしい。 何かある事に声をかける機会を伺っているようだった。 朝教室で一限の準備をしているとひょこり出てくる無駄に整った顔。あからさまにキョロつくその視線に見つからないようにベランダへ出る。 こういう時やつの周りに人だかりができるのはありがたい。 昼休みはチャイムと同時に購買へ。 放課後はダッシュで寮に帰ってバイト。と言っても学校周りに何も無いし、バイトは校則違反だから見つからないように在宅ワークだが。 そうして阿佐ヶ谷帝を避けに避けて生活しているうちに編入してから早くも2週間が経っていた。

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