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** 二宮は昇降口を出て寮に続く道に入る。 寮やほかのサービス棟に続くレンガ敷きの歩道は校舎の雰囲気にあったモダンなデザインで、途中中庭に通じるために基本下足での歩行が義務付けられている。 天井についている照明もガスランプチックで中世ヨーロッパが好きな俺としては校内でも割と好きな場所の1つだ。 そんな歩道を二宮はまっすぐ寮の方へ歩いていく。 うちの学校は教科書もそれなりに分厚くて重いのだが、それを担いでいても傾いたりよろけたりしないシャキッと伸びた背筋、リーチが長い歩幅。 背中を見てだけでわかる綺麗な逆三角。 うん、歩く後ろ姿も様になってるな。 腹立つ。 さぁ、この2週間俺様を避け続けたことを後悔(?)させる時だ! 寮につくまでの間に口説き落としてやろう! ふふ、ふふはは、ふははははっ! 偶然を装うのだから、呼びかける時のセリフにも気をかけねばな。うむ。コホン。 「あ、二宮くんじゃないか。」 「……。」 あれ、聞こえてない? ちょっと声が小さかっただろうか。 「二宮くーん!」 「……。」 あ、ちょっと歩くスピードが上がったぞ!? これ聞こえてるな? 聞こえた上での無視だな? 「にの、おい、ちょ、二宮!」 なんという速さだ。脱兎のごとくとはまさにこの事か?! うさぎというには可愛らしさにかけるが…じゃない追いかけないと! 前の学校では特に部活もしていたという情報は聞いていないのになんだこの速さ。 陸上競技大会に駆り出されては正式なレギュラー部員を抑えてダントツの速さを誇る俺が荷物を持っているとはいえ遅れをとるだなんて! と言ってもそう長くはない道のりに加えて彼はあまりここを通るのになれていない。 寮へ進むには2度ほど曲がらなければいけない角があるがそれを見逃してまっすぐ進む。 ふっ、残念だったなぁ! そっちは取り壊し予定の旧校舎への通路だ! まっすぐの通路は避ける場所もないし何より距離がある! 徐々に近づいてくる肩に手を伸ばして、がしりと掴んだ。 と思ったら手首に強い力がかっt 「いぃだだだだだだだだっ!?何何何何?!痛い痛い痛い痛い!ちょ、待て待て待てっ、ギブ!ギブギブ!取れる!取れちゃうから!」 「うるさい。触るな。騒ぐな。」 何が起こったのか一瞬わからなかった。 ただ痛いのはわかる。 手首がすごい方向に向いているのもわかる。 何だこれ。なんかの技か?

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