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そのまま折られるんじゃないかと思っていたが、二宮はあっさり俺の手首をキメていた力を緩めた。
そして痛む手首をさすっている可哀想な俺様には目も向けず、まるで何も無かったかのように元来た道を帰ってゆく。
さっきの足の速さといい今の関節技といいなんなんだやつは!?
ははぁん?
これはあれだな?俺様と同じくいろんな部に助っ人に呼ばれてた感じだな?
だからあんなに均整の取れた筋肉の付き方をしているんだ。
ってそうじゃない。
早くしないと二宮が寮にたどり着いてしまう。
それは防がねば...。
いや、待てよ阿佐ヶ谷。
寮だったら部屋もあるし廊下でのすれ違いもあるし、食堂やふろ場で会うことも可能じゃないか。
逆にそっちのほうが有利じゃないのかね、ん~?
と思った輩が諸君の中に少なからずいただろう!
君だよ君!!背後と周りを見回すんじゃない。今まさに携帯をもってこの文章を読んでいる君だよ!
確かに、共同の食堂や大浴場がある。しかし、それは二宮たちの住む「一般寮」の話だ。
俺様のように、親や会社が学園に少なからず寄付をしている生徒は、一般寮ではなく通称『S寮』と呼ばれる特別寮に属すのだ。
つまり、別棟!何なら学校の時のほうが距離近い!
え?距離なんか関係ない?
スーパー攻め様なら一般寮に乗り込むなり権力を使って引っこ抜くなりしろって?
...。
君たちちょっと創作物の読みすぎなんじゃないか?一介の高校生にそんなことできるわけないだろう。
えらいのは親であって俺じゃないからな。
S寮生徒の一般寮の共同施設の使用は別に禁止されてはいない。
もちろん他室訪問だって可能だし、すでに一度二宮の部屋には行った。
行ったんだがな?その、ちょっとしたハプニングというかなんというかだな。
俺の住むS寮は必然的というかなんというか、一人部屋にトイレも風呂もあるし、ルームサービスだって頼めるんだが、一般寮は二人で一部屋だったのだ。
うん、もちろん、その、二宮にも同室の生徒が、いたわけでだな……。
俺様が訪ねた時に部屋にいたのはその同室の生徒だった。
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