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攻防
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学外研修とは名ばかりの遠足は、毎年行く場所がきまっている。
「何が楽しくて自分たちが通ってる学校の山を探索せにゃならんのだ。」
「まったくもって同感。」
「でも、キングと一緒にハイキングできて僕は嬉しいです。」
「俺もみんなとワイワイしながら登れるのは嬉しいよ。」
キャっと頬に手を当てて嬉しそうにするクラスメイトを流し見ながら、隣のBクラスの列を眺める。
同じジャージでぞろぞろ歩いていても背が高く、がしりとした二宮は一際目立つ。俺様のように周りに人がいないのは普段から愛想がないせいだろう。今だって周りの風景を見ながら気だるげに歩いている...ちょっとは絵にならなくもない。かもしれない。
お、喋ってる。誰だったか、あの丸メガネ…えーっと、山田...小山田!
そうだ小山田ガク!意外だな。ああいう地味なのと交流があるのか。
まぁ、この前見た感じでは親切で平凡そうだったから、何かしら世話になっているのかもしれないな。うむ。
「あ、あのぉっ」
あん?なんだ今俺様は二宮ウォッチングにいそがs
「おや、君は他学年…かな?いつの間にここに来たんだい?」
「僕歩くのが遅くてぇ、クラスの列からあぶれちゃったみたいでぇ…。」
「それは大変だ。何年生かな。よかったらクラスの列まで送っていくよ。」
「いいんですかぁ?!」
「ああ、いいとも。」
お前みたいな面倒そうなやつさっさと追っ払って二宮ウォッチングを続けたいからな。
「僕ぅ1年A組の西園寺琴ですぅ!」
「西園寺くんね。1Aって確か、1番前の列だよね。」
おい1番前の列って大分遠いじゃないか。
なんでそこからここまで短時間ではぐれるんだこいつ。
絶対わざと。確実に狙ってきてんだろうがバレバレだぞこのハイエナチワワめ…。
もうすぐ休憩スポットだ。たどり着くまでにこの厄介な1年を送り届けて二宮に接触しなくては。
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