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くっそ、1A遠い。
列全体の中ほどにいるはずの俺がいる。しかも普段は見ない美少年()を連れて。
それを見た他の奴らも物珍しげに声をかけてくる。やめろ。時間が無いんだ。
キングとしてはそれぞれに反応をちゃんと返さないといけない。人気者は辛いもんだ。うん。
もちろん引き連れいている後輩美少年()…なんて名前だったか…の相手も忘れない。
「休憩までにクラスに戻りたいよね。」
「え、あぁ、そうですねぇ。あ、そうだ間に合わなかったらぁ2人で休憩にしませんかぁ?」
困ったように下がる眉尻。間延びした話し方が若干鼻につくがそれに目を瞑れば可愛い系で庇護下に置きたくなるような男なのだろう。
「はは、そうだね。でも君可愛いからクラスの奴らが嫌がるんじゃないかな。」
しかし、正直この程度の顔なら掃いて捨てるほどいるし、俺様の周りにはその可愛らしさの使い方を熟知したやつが掃除機で吸うほどにいる。胸焼けするレベルだ。
お前は2人で休憩を狙ってるんだろうが、そうはさせないぞ。何がなんでも帰ってやる……。
「阿佐ヶ谷!」
列と列の隙間をひょろりとした男がこちらへやってくる。
「あ、香取?なんだお前も迷子か?」
「あぁよかった。迷子の西園寺くんも一緒でしたか。」
「へ?」
「1Aから生徒が1人消えたと風紀に連絡がありまして…そしたら程なく2Aからも阿佐ヶ谷が消えたとファンクラブの1人が半狂乱で舞い込んで来たんですよ。」
「あー、すまん。」
後ろからは俺達のやり取りは見えなかったんだろう。俺ウォッチングしてたやつが俺がいなくなったことに気づいて連絡網がまわったんだろうな。LINEで回せば早いのに…。そうだ。
「香取が来たんなら俺はここでお役御免だな。」
「えっ」
「そうですね。あとは俺が行きましょう。さ、行きますよ。」
名残惜しい。行かないで。と下から見上げられる。いつもなら俺が行くよって言うのだが、今はお前より二宮だ。
香取に名前も覚えなかった1年をおしt、コホン引き渡して俺は全力で自分のクラスに戻った。
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