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 穏やかな風に導かれるように、青年の背後に視線を向ける。  障子が開け放たれ、外の景色が一望できるようになっていた。桜の花びらが美しく咲き乱れ、草花も華麗に咲き誇っている。 「さぁ、これを飲んだほうがいい」  青年が口角を緩め、盃《さかずき》を差し出してきた。 「ありがとうございます」  盃を受け取ると、ゆっくりと口を付けていく。  初めて口にする不思議な味だった。甘いようで苦く、水のようで酒にも感じる。味わうまもなく、急激な喉の渇きにあっという間に飲み干してしまう。  その様子を青年は目を細め、観察するように見つめてくる。  見つめられている気恥ずかしさを誤魔化すように「美味しかったです」と盃を返した。 「それなら良かった」  青年は微笑みつつ、盃を傍らに置く。  喉の乾きが癒えたせいか、全身からなんともいい難い幸福感が湧き上がってくる。それと同時に、目から涙が溢れ出した。  流れ出る涙に戸惑いつつも、袖で涙を拭っていく。

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