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「ああっ! 勿体無いからそのままで」
青年が慌てた様子で、腕を掴んでくる。力強いその手に全身が硬直したようになり、身動きが取れなくなる。
怯んでいるすきに、青年が顔を近づけてそっと頬に舌を這わせてきた。
少し冷たく柔らかい感触が頬に触れ、体が震える。
「っ……」
突然の青年の行動に、驚きのあまり目をつぶってしまう。
「お、お前……記憶がないのか?」
青年の発言に恐る恐る目を開くと、青年は愕然とした表情でへたりこんでいた。
そこでようやく自分が何者でどうしてここにいるのか、全く思い出せない事に気づく。
「そう……みたいです」
困惑気味に言葉を返すと、青年は深い溜め息を吐き出した。
「とんだ供物だな。何の為の生贄なんだかわかったもんじゃない」
「供物……ですか?」
何のことだか分からず、困惑した表情を向ける。
「お前は、人身御供にされたわけで……あれ それにしては見慣れない格好だな」
人身御供という言葉が耳慣れず、首をかしげる。
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