3 / 185

3

「ああっ! 勿体無いからそのままで」  青年が慌てた様子で、腕を掴んでくる。力強いその手に全身が硬直したようになり、身動きが取れなくなる。  怯んでいるすきに、青年が顔を近づけてそっと頬に舌を這わせてきた。  少し冷たく柔らかい感触が頬に触れ、体が震える。 「っ……」  突然の青年の行動に、驚きのあまり目をつぶってしまう。 「お、お前……記憶がないのか?」  青年の発言に恐る恐る目を開くと、青年は愕然とした表情でへたりこんでいた。  そこでようやく自分が何者でどうしてここにいるのか、全く思い出せない事に気づく。 「そう……みたいです」  困惑気味に言葉を返すと、青年は深い溜め息を吐き出した。 「とんだ供物だな。何の為の生贄なんだかわかったもんじゃない」 「供物……ですか?」  何のことだか分からず、困惑した表情を向ける。 「お前は、人身御供にされたわけで……あれ それにしては見慣れない格好だな」  人身御供という言葉が耳慣れず、首をかしげる。

ともだちにシェアしよう!