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 湯から上がり浴衣に袖を通し、ヒスイを探しに廊下を歩く。  ヒスイは縁側にいて、月を見つめていた。白く神々しい光に照らされた横顔が彫刻のようで、翡翠がかった瞳が綺麗に輝いている。  つい声をかけるのも忘れて、天野はその儚げな姿に見惚れてしまう。 「何?」  視線に気づいたヒスイが睨め付けるような視線を向けてくる。その鋭い眼光に、体がびくりと震えた。 「す、すみません。つい、綺麗だなと思って……」  湯から上がったばかりなせいなのか、頬が熱くなっていた。 「綺麗? 何が?」  ヒスイが眉間に皺を寄せ、キョロキョロと辺りを見渡している。  その様子が少し可笑しくて、天野は小さく吹き出す。 「何が可笑しんだ?」 「ヒスイさんを綺麗だと言ったのです」 「……俺?」 ヒスイが自らを指差し眉を寄せた。 「そうです」  天野が頷くと、ヒスイは息を呑み切なげに俯いた。  褒めたはずなのに、ヒスイの表情は悲しげでどこか冴えない。 「……すみません」  何か気に障る事を言ってしまったのかもしれないと、途端に不安が押し寄せた。

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