17 / 185
17
湯から上がり浴衣に袖を通し、ヒスイを探しに廊下を歩く。
ヒスイは縁側にいて、月を見つめていた。白く神々しい光に照らされた横顔が彫刻のようで、翡翠がかった瞳が綺麗に輝いている。
つい声をかけるのも忘れて、天野はその儚げな姿に見惚れてしまう。
「何?」
視線に気づいたヒスイが睨め付けるような視線を向けてくる。その鋭い眼光に、体がびくりと震えた。
「す、すみません。つい、綺麗だなと思って……」
湯から上がったばかりなせいなのか、頬が熱くなっていた。
「綺麗? 何が?」
ヒスイが眉間に皺を寄せ、キョロキョロと辺りを見渡している。
その様子が少し可笑しくて、天野は小さく吹き出す。
「何が可笑しんだ?」
「ヒスイさんを綺麗だと言ったのです」
「……俺?」
ヒスイが自らを指差し眉を寄せた。
「そうです」
天野が頷くと、ヒスイは息を呑み切なげに俯いた。
褒めたはずなのに、ヒスイの表情は悲しげでどこか冴えない。
「……すみません」
何か気に障る事を言ってしまったのかもしれないと、途端に不安が押し寄せた。
ともだちにシェアしよう!