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「昔……同じことを言った奴がいた」  ヒスイの言葉に、今度は天野が息を呑む。自分だけじゃなく、他にもこの場所に来た者がいることに一つの希望が生まれる。  もしかしたら、何かしら今の状況を打破するような情報が得られるかもしれなかった。 「この場所に、他にも誰か来たのですか?」  少し食い気味に問いかけると、天野はヒスイの隣に腰をかける。  ヒスイが一瞬面食らったような表情をした後、表情を曇らせた。 「来た……来たと言うより……拾った」 「拾った?」 「そう。お前と同じ。違う……お前は貢物っぽくないもんな」  ヒスイが力ない笑みを浮かべ、視線を向けてくる。 「貢物って?」  人間を貢物にするとは、常識的に考えて不可思議だった。確かに人柱なるものがあると知っている。けれども、妖怪に人間を捧げるのは考えつく知識の中には含まれていなかった。 「……この周辺の村の住人が勝手に始めたんだ。何十年かに一度、結界を越えた人間が森に入り込んでくる――」  ヒスイがため息混じりに語ってくれたのは、その迷子の人間を保護した時の事だった。

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